公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

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全国のオアズパーソンへの手紙(第99信)

2020年11月4日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

この10月は、全日本選手権(10月8日-11日)と全日本大学選手権(10月22日-25日)を開催することができました。ほんとうに嬉しいし、ホッとしています。

今年は新型コロナウイルスのお蔭で、オリンピックはもとより国内外の主要大会がことごとく中止・延期となる中、「この2大会だけはぜひ開いてほしい!」という選手並びに関係諸氏の熱意に押され、協会としても早くに開催に向けて舵を切りました。100年の歴史を持つ全日本選手権が中止になったのは関東大震災の大正12年と戦時中の2回(昭和19、20年)だけです。「コロナごときに負けて、中止してたまるか!」という気持ちでした。

開催となると、開催地である埼玉県、戸田市、そして地域住民の皆さんのご理解を得、了承してもらわねばなりません。まずこれに手を尽くしました。次いで具体的な感染防止対策です。協会の医科学委員会が7月に『新型コロナウイルス感染症対策を伴うボート競技大会開催に関するガイドライン』を公表していますので、それに基づいて対策を講じました。そもそもボートは感染リスクの小さなスポーツだとは思いますが、万々一をおもんぱかり「観客ナシ、応援ナシ、表彰式ナシ」を徹底しました。「応援に来ないでください、表彰式も人が密集するので行いません」という決断は、主催者としてなんとも味気ない残念至極の措置でした。状況を理解し、完璧に守ってくれた皆さんに感謝します。

一方で映像配信はしっかりやろうと、両大会とも全レースYouTube配信を行いました。またNHK(BS)は全日本の決勝戦(10月11日)を2時間枠で放映してくれましたし、大学選手権ではUNIVAS(後に詳しく紹介します)が4日間全レースのLIVE配信をしてくれました。

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さて、本番のレースについてです。まず全日本選手権では台風14号の影響の雨風にちょっと悩まされ、特に決勝の日は関東直撃の予報でヒヤヒヤしましたが、この台風、奇妙奇天烈なUターンカーブを描いて太平洋のかなたに消えてくれ、決勝戦は好コンディションで実施できました。

オリンピックを目指す日本代表候補選手10人もそれぞれの所属団体に戻っていろんな種目で参加しました。コロナ禍の中、毎月強化合宿をキチッと続けていて調子は登り坂と聞いていましたが、たしかに今回その強さを見せつけてくれました。ほとんどの選手が優勝クルーで漕いでいたようです。

M8+でNTT東日本が初の5連覇を達成しました。(四連覇はこれまで東大、NTT東京、明治安田生命の3チームが達成しています)またW2-で立命館大学が7連覇という偉業達成です。おめでとうございます。

2週間後には全日本大学選手権です。全日本にも出漕したクルーも多かったようですが、通常では考えられない異例のスケジュールでした。

わたしは土曜、日曜の両日、本部建物の窓越しに全レースを観戦しましたが、近年になく大接戦のレースが多く、ゴールの瞬間まで目が離せず見応えのある大会でした。多くの皆さんは映像での観戦でしょうが、堪能できたのではないでしょうか。

各種目での初優勝も3種目でありました。M8+の仙台大、M2-の京都大、W2-の立命館大です。仙台大のM8+優勝は「まだ勝っていなかったのか」という印象ですし、立命館大(全日本優勝ただしメンバーは異なる)と京都大(全日本2位)は、全日本での勢いをそのまま持ち込んで圧勝でした。おめでとうございます。

もうひとつわたしの印象に残ったのは富山国際大の活躍ぶりです。優勝こそM2×だけでしたが、決勝に4種目(M1x、W2-、W2x、M2x)で駒を進めただけでなく、順位決定戦にも2クルー(M4x、M4-)が勝ち上がったのは見事なものです。益々の活躍を期待します。

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先ほど全日本大学選手権で全レースをLIVE配信してくれたUNIVAS(ユニバス)のことを紹介しましたが、これは正式名称「一般社団法人大学スポーツ協会」という組織です。2019年3月に初代スポーツ庁長官だった鈴木大地さんの肝いりで設立されました。基本理念として「大学スポーツの振興」と「大学スポーツ参画人口の拡大」を謳っていますが、会長の鎌田薫さん(元早稲田大学学長)は挨拶メッセージの中で、より具体的に『日本の近代スポーツは、大学によって導入され発展させられてきました。(中略)スポーツ界全体が発展していく上で、大学スポーツに期待される役割はなお大きく(中略)大学スポーツをさらに大きく発展させるための活動を加速していきます』と述べておられ、これはわたしも全く同意、納得できる考えです。

為すべき事業として大きく5つの活動がかかげられています。

・デュアル キャリア
学業と競技活動の両立支援
・安全安心
運動活動環境の整備
・試合動画
UNIVAS LIVE配信
・UNIVAS CUP
競技横断型大学対抗戦
・UNIVAS AWARDS
優秀選手表彰

実に広い、ある面では欲張りな活動計画ですが、今回の全日本大学選手権で初めて4日間の全レースのLIVE配信をやってくれましたが、パソコンで観る画像も良く、決勝戦では音声もついて、わたしとしてはなかなか立派なものだと思いました。まだ設立して1年半ですが、5つの活動が全て動き出しており「変則的でもかまわない。まず実際活動しながら考える」という意志が明確に感じられます。当日、事業企画部長の椛沢保男さんが挨拶に見えられましたが、今後が期待できる注目すべき組織だというのがわたしの印象です。連携を深めていきたいと思います。

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10月16日(金)の夜、今年度のFISA総会が「ネット会議」で開催されるので、事務局のあるJSOスクエアビルの会議室に出かけました。木村新理事長、千田隆夫国際委員長が一緒です。そして細淵雅邦理事もFISAの理事の一員として出席しています。

なにしろ肝心の東京五輪が延期となり、FISA主催のレースも殆どが中止となった中での総会ですから、ただでさえ気勢があがらない中、やはり「ネット会議」では、どうしても臨場感にかけ、迫力にかける印象を受けるのはいたしかたないでしょう。J.C.ローランド会長の挨拶・報告、そしてM.スミス事務局長の報告を、手許の「Agenda Papers」と照らし合わせながら聴きました。次いで退任した「パラローイング委員長」の後任選挙に入り、後任にはイタリアのP.Grizzetti女史が選ばれました。選挙となるとボタンを押すだけですから、アッという間に結果が出ます。「ネット会議」の唯一のいいところかもしれません。この総会で長年使ってきたFISA(Fédération Internationale des Sociétés d’Aviron)を改称しWorld Rowingを正式名称とすることが決まりました。

総会に続いて、17日(土)18(日)の2日間、臨時総会がやはり「ネット会議」で開催されました。臨時総会は4年に1度のルール改訂のための総会です。私は臨時総会の方は欠席させていただき、木村理事長、日浦医科学委員長、千田国際委員長に出席してもらいました。FISA執行部から提案された膨大な量の改訂案はすべて承認されたそうです。

ニュースにもなっているので皆さんご承知かもしれませんが、2024年パリオリンピックで実施する種目案として、以下の15種目をFISAからIOC理事会に提案することが決定しました。

 
男子:
1X
2X
2-
4-
4X
8+
コースタル1X
女子:
1X
2X
2-
4-
4X
8+
コースタル1X
混合:
コースタル2X

(以上)