日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第95信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
6月19日(金)、今年度第1回の日本ボート協会定例理事会が神宮外苑のJSOS(日本スポーツオリンピックスクエア)で開かれました。本来5月に開催予定だったものが新型コロナの影響で1ヵ月延長され、「はたして全員一堂に集まることが許されるかな」と心配していましたが、無事通常どおりに開くことができてホッとしました。なんと欠席者は理事25名、監事2名のうちたった1名だけで、わたしの知るかぎりこれまでで最高の出席率ではないでしょうか。
議題は盛り沢山です。7月23日(海の日祝日)に開かれる定例総会にむけた「総会上程議案」(事業報告、決算、役員人事など)が6件、通常の「審議議案」が9件、「報告事項」が3件です。議長として手早く議事を進めなくてはと心掛けましたが、やはりいつも通りに意見、質問がたくさん出て、それでも21時前には終了することができました。
わたしは他のスポーツ団体の理事会の様子は知りませんが、会社の取締役会をはじめ各種機関の理事会は数多く経験しています。それらと比べても日本ボート協会の理事会はごく健全だと思います。決めておかなければならない事項を遅れることなく理事会に上程すること、そして討議を率直に、活発に行った上で議決していくこと、この良き伝統はぜひ続けていきたいと思っています。
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6月22日付で日本ボート協会のホームページ上に「2020東京オリンピック日本代表選手選考基本方針第3版」が掲載されました。オリンピックが1年延期されるという歴史上初めての異常事態のなかで、日本代表選手をどう選ぶかの「選考方針・手続」の基本を定めたものです。これも6月19日の理事会で討議・決定されたものですが、ここではポイントとなる基本の考え方を説明しておきます。
「2020東京オリンピック日本代表選手」の選考は今年の春先まで規定の選考スケジュール通り順調に進められ、3月22日の選考レースの結果、軽量級男女各4名を選考しました。その他のカテゴリーについて選考はしませんでしたが順位を付けて終了しました。
ところがその2日後の3月24日に2020東京オリンピックの1年延期が発表されたので、選考スケジュールはいったん中断しました。そして3月28日に予定していた軽量級の最終代表決定レースを中止して現在に至っているわけです。
その後、新型コロナ禍の影響で約2ヵ月半の空白期間が生じましたが、その中で新しい考え方・意見が出てきました。それは「1年延期された以上、来年改めて再選考すべきだ」というものです。この意見を受けて強化委員会としては鋭意広く各方面(協会関係者、法律専門家、他NFの選考方針など)の見解を聴取し、検討を重ねてきました。その結果、次のような結論を得、それが今回の理事会で承認されたわけです。
「アジア・オセアニア大陸予選の代表再選考は行わない。今年3月の選考結果を尊重し、軽量級男女各4名およびオープンシングルスカル男女各1名の合計10名の代表候補選手の中から、来年3月(予定)に日本代表選手を決定する。(選考基本方針第3版には例外についても示されている)」
この結論に至った理由は次の3点だと思います。
①正式の代表選考プロセスに則って実施された今年3月の選考レースの結果は、重視されなければならない。そこを目指して猛練習してきて代表候補となった選手の気持ちは裏切れない。
②ここ3~4年の個々の選手の実力を見てきた強化委員会の見解として、現在の候補選手の選任はほぼ妥当なものと考える。
③まだまだ続くことが予想される「新型コロナ禍」という異常事態をみる時、安易に再選考プロセスを行うという決定には相当の危険がともなう。無責任に判断はできない。
非常に重要な決定だと思うので、すこし詳しく書きました。ただ、重要なポイントだけですので、ホームページの本文をよく読んでください。
再チャレンジしたいと考えていた選手諸君は、まだまだ世界最終予選はじめチャレンジすべきレースはあります。また代表候補選手諸君は上記のような経緯をへた上での結論であることを心に留め、まずは練習にベストを尽くし、さらに強くなることを期待します。
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今年度の日本並びに世界・アジアでのボート大会が、この新型コロナウイルス感染拡大の中でどうなっているのか、理事会で報告がありました。
まず世界(FISA関連)の今年度の16大会は全て中止又は延期、そしてアジア関連では7大会が全て延期で、要するに全滅です。
日本では新たに鹿児島国体(9月17日~20日)が今年は行われないことが発表されました。今後開催を目指しているのは次の大会です。それ以外の大会は状況を見ながら検討中です。
1.全日本大学選手権 9月10日~13日 戸田
2.全日本選手権 10月8日~11日 戸田
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先日、NHKのニュースで戸田ボートコースにおける水草除去作業の様子が放映されました。わたしも見ましたが、テレビの威力はたいしたもので、ボートには関係のない多くの友人・知人から「水草対策、たいへんなようですね」と声を掛けられることが多々ありました。
5月の連休頃には、浮水草の上に鳥が巣をつくったなどという、信じられないような話も聞こえてきました。埼玉県も4月初めからの対策予算はつけてくれているのですが、なにしろ新型コロナ対策に忙殺されて「発注に手がまわりません」と言っていたようで、能村卓施設委員長はじめ担当の皆さんは「なんとか漕げる水面をつくりたい」と気持ちばかりが焦りつつ、水草の勢いには押され気味で、悩み深いようです。
5月末の土日から学生諸君を中心としたボランティアの皆さんが毎週水草底引き作業を始めて、だいぶきれいになってきたとの報告を受けました。そこで6月27日(土)の朝、戸田コースに出かけ皆さんの奮戦ぶりを見せてもらいました。120~30人、学生中心ですがOB・OGの皆さんもかなりの数まじって、3カ所に分かれて、この日は底引きではなく水面に浮いた水草の除去をやっていました。
このボランティア活動を中心になって企画・監督してこられた波間昭司さん(法政大学ボート部監督)に詳しく話を聞かせてもらいました。
「野球部員がグランドの整備をするのと同じです。自分たちが練習やレースをする水面を、自分たちで整備しようぜ、と声をかけたのです。日体大の鈴木正保監督や戸田市の和田卓さんとも最初相談しましたが、選手同士が声を掛け合い、多い日には200人以上集まってくれます。毎週やっています。埼玉県もようやく6月末からは藻刈船3隻による水草刈りを初めてくれるようです。業者の方には刈った水草をキチッと回収して陸にあげるまでやってくれるようお願いしています。 水草とは、これからも長くつき合っていかなければならないと覚悟しています。ボート部員たる者、水面清掃は自分たちの当然の仕事だ、という伝統をつくりたいものです。」
この波間監督の話には感動しました。われわれ日本ボート協会としても、戸田コースの管理者である埼玉県ともしっかり連携して学生諸君に負けないように頑張らなければと、思いを新たにしました。またカヤックが10艘ほど出て水草を集めていましたが、「大正大学のカヌー部が何かお手伝いできますかと言ってきたので…」と波間さんも嬉しそうです。これからは同じ水上スポーツとしてカヌー協会との連絡を密にしなくてはと考えていましたが、現場ではこうして交流が始まっているので嬉しくなりました。コースで案内をしてくれた日本ボート協会事務局の野口紀子さんと「今日は貴重な話を聞けたね」と話しながら帰路につきました。
(以上)