日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第93信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
「緊急事態宣言」が5月末まで延長されましたが、皆さんこの大変な状況の中で、いかがお過ごしですか。わたしは「ボート関係者が新型コロナウィルスにやられた」という話は聞いていませんが、国内で1万5000人も感染している状況ですからゼロというわけではないでしょう。今後とも気を抜かず、そして甘くみることなく十分注意してお過ごしください。
現役の選手諸君にとっては、本当にとんでもない事態になりました。「本格的な練習(特にクルーを組んでの水上練習)ができない、してはいけない」そして「目標とすべきレースも次々と中止(延期)になっていく」。こうした中で、気を抜くことなく自分なりの目標を決めて練習を続けていくのは、並大抵のことではないと思います。
しかし、ぜひ頑張ってください。日本のみならず世界中の選手たちが同じ試練にさらされているのです。コーチとの話し合いをしっかりしながら、この荒波を乗り切ってください。
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東京オリンピック・パラリンピックの話題も3月24日に1年延期が決まって以降、特段の新しいニュースは何も聞こえてきません。IOCもFISAも、そして日本の組織委員会も「今はそれどころじゃない、先が見えない中で何も決めようがない」といったところかと思います。大相撲の夏場所も中止となり、これでほとんどのスポーツが「空白の時」を迎えました。野球、サッカー、ラグビー。ゴルフといった人気プロスポーツのテレビ実況も全く無くなって、われわれ「STAY HOME族」としては、毎日何もすることがありません(競馬だけは無観客でやっていますね。馬には新型コロナも感染しないのでしょうか)。
B.C.(Before Corona)、A.C.(After Corona)という言葉ができたそうです。西暦のB.C.、A.D.に倣ったのでしょうが、A.C.(コロナ後)の社会は大きく変わるでしょう。どう変わるか、特にスポーツのあり様・位置づけが社会生活のなかでどう変わるのか、たいそう興味があります。
まずオリンピックですが、これは変わるでしょう。来年の東京大会に対する日本国民の考え方もちょっと「冷めた方向」に変わったように感じます。そもそも猛暑の8月に開催することに疑念を抱いていた平均的日本人が、今度の「コロナ禍」でオリンピックそのものに冷めてしまったとしたら困ったことです。わたしはオリンピックといってもボートにしか関心がありませんが、派手すぎる開会式・閉会式には大反対です。オリンピックのボートとは、「力と技」を競うスポーツそのものの、4年に1度の最高の世界大会だと考えて、熱を入れているのです。ともかくオリンピックが地味な健全な方向に変わってほしいと思っています。
一方で市民スポーツ、生涯スポーツとしてのボートです。今度の「新型コロナ騒動」で感じたのは、住民にいちばん近い地方自治体の大切さです。国としての役割はもちろんありますが、住民のことを本気で考えてくれる市町村長を持ったところは幸せだ、と感じました。A.C.(アフター・コロナ)のボートも、今まで以上にボート場所在地市町村と協力しながら地域に密着した生涯スポーツ・ボートを育てていくべきだと思います。
今年「日本ボート協会創立百周年」を機に「新長期ビジョン」を作成すべく、松元崇理事を長とする委員会で検討を続けてもらっています。上記したのはわたしのごく個人的な思いですが、どうか衆智を結集して日本ボートの新しい方向を指し示すビジョンを作りあげてください。
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なにしろこの4月は1回しか電車に乗りませんでした。蟄居そのものです。ボートコースにもいかず、ボート仲間にもまったく会っていません。ですからこの手紙も具体的な話はゼロ、理屈めいた話ばかりになりましたがご容赦ください。
(以上)