日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第81信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
4月、いよいよ本格的なボートシーズンの幕開けです。イギリス・テムズ川で毎年3~4月に催されるケンブリッジ大・オックスフォード大対校レガッタに倣ったのか、日本のボートは各大学(や一部の高校)の対校レースからシーズンがスタートします。
3月31日発刊の「Rowing」誌に「2018年度対校戦・定期戦記録」が載っていますが、それによると昨年開催された学校対校戦は17試合(大学対校15、高校対校2)とあります。「2校対校戦」ばかりでなく「五大学レガッタ」などもあり、大学35校(一部学部対校もあり)高校3校が毎年対校戦を戦っているのです。もっとも古くからの対校戦がなんと「筑波大付属高 対 開成高」で、第90回というのにはちょっと驚きました。
もしかして漏れているのもあるかもしれませんが、いずれにしろ少なくともこの17大会は今年も開催されるでしょう。半分はもう終ったと思いますが、各校結果はいかがでしたでしょうか(わが母校は残念ながら今年も負けました)。
もちろん対校戦を行っていない学校もたくさんありますし、対校戦を経験していない名選手・オリンピアンもたくさんいます。ですからそれだけを過剰に重視する気はまったくありませんが、とはいえ、わたしは「対校戦」はボート選手にとって大事だと思っています。なぜなら団体スポーツとしてのボートの良さは、対校戦を戦うなかで培われるものが多いからです。学校という団体チームで戦うことによるチームスピリットの醸成、またエイト、フォアなど大艇を漕ぐことで「真のユニフォミティ」というボートの真髄を経験するチャンスも多いでしょう。
ご存知のように、日本のボート界は大きく2つの課題に取り組んでいます。国際競漕力の強化と国内ボートの普及・発展です。そして今は特に、2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国際競漕力の強化に必死に取り組んでいます。世界で勝つためには、まず強い「個人」を育てなければなりません。シングルスカルのレースで選考した世界レベルの強い個人を集めて「クルー」を組む、今はそれしかないと信じて活動を進めています。しかしもちろんこれは「日本代表クルー」という頂点のごく少数の選手たちの話です。一方の課題である大多数のオアズパーソンに係るボートの普及・発展は、ちょっと別の考えで進めなければなりません。この両者を、どう矛盾なく両立させていくか、これが古くて新しい問題なのです。
以上、戸田ボートコースで対校戦を観戦しながら考えたことを述べてみました。
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日本代表(候補)選手たちの様子を簡単にお知らせしましょう。
まずシニアの日本代表候補選手たちは、4月8日から27日までの20日間、兵庫県円山川城崎漕艇場で合宿をはりました。ここ円山川のある豊岡市は以前から海外遠征時にお米を差し入れてくれたり、ボートをしっかり応援してくれたりしていましたが、今回改めて正式に豊岡市とボート協会で「連携・協力に関する協定」並びに「公認パートナー契約」を結ぶこととなり、4月26日に中貝宗治市長と木村新理事長の間でサイン交換をしました。本当にありがとうございます。円山川の環境は良い、地域も応援してくれる、そしてなんといっても温泉が良い。厳しい練習も「温泉で疲れもふっとぶ」と選手たちにも好評です。いい合宿ができたようです。
シニアの選手たちは5月4日には羽田を発ち、ブルガリア・プロヴディフに向かいました。今年最初の国際レース、ワールドカップ第1戦(5月10~12日)に参戦します。男子4クルー7人(LM2xが2クルー、M1x、M2x)女子3クルー6人(LW2xが2クルー、W2x)です。8月末の世界選手権に向けて一戦一戦を大事に、しかし焦ることなく戦ってください。
U23は4月16日から12日間、シニアと同じ円山川で強化合宿をはりました。そしてこれは今年初めての試みなのですが、U23の段階でより多くの国際レース経験を積み成長してもらうべく、シニアと一緒にワールドカップ第1戦に参戦してもらうことにしました。5月4日にシニアと一緒にブルガリアに向かいました。男子2クルー(M1x、LM1x)女子2クルー(LW2x、W2-)の6人です。臆することなくいい経験を積んできてください。
ジュニアの日本代表選手16人(男女とも、4x、2x、1xの各3種目、補漕2名を含む)はすでに4月22日に羽田を発ち、フランス・ドイツ遠征に出発しました。フランス・エギュベレットで合宿した後、ドイツ・ミュンヘンでの「ドイツ国際ジュニアレガッタ」(5月4~5日)に参戦しました。今年のU19ジュニア日本代表は、8月には日本の新しい海の森水上競技場で開かれる世界ジュニア選手権を控え、実に厳しい強化練習計画を組んでいます。5月からの3ヵ月間、主に福井県美浜町で毎月2回ずつの強化合宿を予定しています。
なんといっても、日本で開催されるというまたとないチャンスです。大変とは思いますが、ぜひ悔いのない練習を積んで、万全の体制で8月の世界ボートジュニア選手権に臨んでください。
選手諸君の健闘を、心より祈ります。
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5月4日(土)琵琶湖漕艇場で行われている「朝日レガッタ」を観に行ってきました。「令和」最初のレガッタ見学です。わたしは20年程前、関西ボート連盟の会長をしていたので、この大会はもちろん馴染み深いのですが、今回あらためてこの大会が、特に関西以西のオアズパーソンが幅広く参加する、シーズン幕開けの大事な大会だという認識を深く持ちました。今年は「488クルー、1368名の仲間が集い」(奥村功 関西ボート連盟会長のごあいさつ)ということですが、まず中学生からマスターズまで、誰でもが参加できるように、22種目の競技(パラローイングも含む)を準備しています。ですから失礼ながら戸田の大会ではあまりお見かけしない地域のクルーが実に沢山参加しているのです。一方で高校生の「東京選抜クルー」も何艇か出ている、といった具合で、実に「多彩」なのです。本当に良いことで大事なことです。
また情報発信にも力をいれているようで、ドローンを使った映像をYouTubeで同時中継して、スマホで観られるのにも感心しました。
それと、2020東京オリンピック・パラリンピックの陰に隠れてあまり知られていませんが、2021年に世界最大の生涯スポーツの国際総合競技大会である「ワールドマスターズゲームズ」が関西地区で開かれることが決まっています。35競技行われるのですが、ボートは琵琶湖が会場となります。そのためもあり、老朽化した漕艇場の本館を建て替えるそうです。その件の打合せもあり、滋賀県のスポーツ担当理事の金山昭夫さんが来てくださり、いろいろ準備の様子などを伺いました。規模としては、東京オリンピック・パラリンピックよりはるかに大きく、参加選手は5万人が目処というのですから、本当に大変です。
4日の夜は、大会役員の皆さん60~70人とすき焼きを囲んで語り合い、楽しく有意義な時間でした。
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4月13日(土)、「2019年度日本ボート協会顧問・参与会」が巣鴨の三菱養和会で開かれました。22人の顧問・参与の方が出席され、協会からは現在の主要な活動状況として次の4点を各委員長からご説明しました。
- 強化活動の状況
- 世界ジュニア選手権の件
- パラローイングについて
- 海の森水上競技場完成記念レガッタについて
皆さんからいくつかの貴重なご意見、ご指摘をいただき、今後に活かしていくつもりです。会議の後、懇親会でお互い久闊を叙し合い、またあちこちで議論の花が咲いていました。
とにかく今年は、本当に忙しい、そして日本ボート協会にとって大事な年です。役員一同も頑張りますので、皆さんどうぞよろしく願います。
(以上)