日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第78信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
各地の「マシンローイング大会」もほぼ終了したようです。今年は何人位の参加だったのでしょうか。平成元年(1989)、わたしが強化部長の時に第1回大会を東西2会場で開催し、参加者は約600名でベストタイムは阿部肇選手(現仙台大学監督)でした。平成の終る今年が第31回大会になるわけです。
FISAのホームページに「2019年ヨーロッパ室内ローイング大会」(1月26日デンマーク・コペンハーゲン)の結果が載っているので、日本とどの位の差があるのかトップ同士をちょっと比較してみました。(ただ、日本は愛知と愛媛大会の結果はまだランキングに反映されていないこと、ナショナルチームの全選手が参加していないことを了承ください)
軽量級 | (男子) | M.Garetti(イタリア) | 6:08.9 |
梶谷嶺(NTT東日本) | 6:18.1 | ||
同 | (女子) | J.Rasmussen(デンマーク) | 7:05.9 |
大石綾美(アイリスオーヤマ) | 7:15.8 | ||
オープン | (男子) | S.Nielsen(デンマーク) | 5:47.2 |
桜間達也(同志社大) | 6:12.0 | ||
同 | (女子) | F.Erichsen(デンマーク) | 6:39.2 |
上総 香子(デンソー) | 7:14.5 |
軽量級は男女とも約10秒差、決して届かない差ではありません。一方オープン男子のタイムは「ほんとかな」と思うほどの凄い記録ですね。Nielsen選手は、昨年の世界選手権のシングルスカルで第7位の選手だそうです。
× × ×
1月19日(土)、渋谷の岸記念体育館のスポーツマンクラブで日本ボート協会の新年会を開きました。今年も100名以上のオアズパーソンが集まり、2時間以上愉快に懇談を楽しみました。今年の5月にはこの岸記念体育館も閉鎖され、神宮外苑の新しいビルに事務局も移るので、ここでの最後の新年会ということになります。
席上、恒例の「ワールドチャレンジ表彰」を行い、アジア大会のメダリスト、3クルー5名に賞状と記念品を贈呈しました。
LM2x | 金メダル | 武田匡弘(関電美浜) |
宮浦真之(中央大) | ||
M1x | 銅メダル | 荒川龍太(NTT東日本) |
M2- | 銅メダル | 高野勇太(NTT東日本) |
大塚圭宏( 同上 ) |
5人の選手からは、それぞれ「東京オリンピックに向けて、今年が勝負の年です」などと力強い決意表明があり、会場のOB、OG諸君からも「頑張れ!」と声援の声が飛んでいました。
なお、LM2xの武田・宮浦クルーは、「第68回日本スポーツ賞」(読売新聞主催)の競技団体別最優秀賞も受けています。
最初の挨拶で、わたしからは「今年は極めて重要なイベントがいくつも重なります。全員心をひとつにして、立派に乗り切りましょう」とお願いしました。
そしてもうひとつ、前から気にかかっていた事をお話ししました。それは「オアズマンシップ」(今は「オアズパーソンシップ」というのが適当なのでしょうが、「スポーツマンシップ」と同じ様に熟したことばなので、そのまま使います)についてです。最近この言葉をあまり聞かなくなったように思います。指導者・コーチの皆さんは、新人選手が最初にオールを握った時に、ぜひこの言葉「オアズマンシップ」を教えてやってください。われわれボート漕ぎにとって、最も大切な、そして誇るべき精神だと思うからです。
わたし自身、60年前に隅田川で始めてナックルフォアに乗った時、先輩から「漕いでいて、川に白鳥が浮いていたら驚かさないように漕ぎやめなさい。それが『オアズマンシップ』の精神だ」と教えられ、「なるほど!オアズマンは強いだけでなく、優しい心も持たなくてはならないのだな」と印象深く聴きました。その他「クルーは一心同体、常にクルーの仲間のことを考え、寝ても同じ夢を見るようになりなさい」とか「試合で勝つことはもちろん大切だが、練習で全力を出し切るのが『オアズマンシップ』だ」といったことを、繰り返し教えられて、今日に至るまで人生の糧にしてきました。
そしてわたしがお願いしたのは、今改訂に取り組んでいる「競漕規則」の前文でも良いので、この「オアズマンシップ」の理念を入れてほしいということです。「競漕規則」の改訂原案は既にパブリックコメントの集約も進み、最終案をまとめつつある段階ですが、例えばFISAの競漕規則に倣って「アスリートファースト」の理念を組み込むことなどはわたしも大賛成なのですが、同時にこの「オアズマンシップ」の理念も入れてください、ということなのです。
以上、前々から感じていたことなので、長々と書きました。
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日本代表候補選手諸君は、シニアもU23もU19も、それぞれ厳しい練習を続けていることと思います。いつも申し上げているとおり、冬場の11月から2月までの4ヵ月間はボートの基礎力、すなわち「体力強化」と「正しいオールの技術」を身につける最も重要なシーズンです。ここで劇的に進化した選手・クルーを、わたしは何人も見てきました。
選手諸君にとって、まずは3月11日(U19は11日、12日に選考レース)に開かれる「日本代表候補選手選考 予選タイムトライアル」が目標でしょう。ここを突破して、シニア・U23は3月22日(金)~24日(日)の最終選考会に臨むことになります。シニアにとっては8月25日(日)からの世界選手権(オーストリア)、U23は7月24日(水)からのU23世界選手権(アメリカ)、そしてU19にとっては新設の海の森水上競技場で8月7日(水)から開催の世界ジュニア選手権が今年の最終目標です。
各選手とも、いたずらに焦ることなく、一日々々、地に足のついた実のある練習を重ねてください。健闘を祈ります。
以上