日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第72信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
7月15日(日)16日(祝)の2日間「酷暑」といってもいい猛烈な暑さの中、「第38回全日本中学選手権競漕大会」が、長良川国際レガッタコースで開催されました。長良川での開催は2015年以来、3年振りですが、直前になって心配なことが2つありました。ひとつは、10日程前に上流の郡上市周辺が豪雨に見舞われ、長良川も大増水で、はたしてレースができるかという心配、もうひとつは、熱中症で死者もでるという酷暑の中で中学生にレースを漕がせていいものかという心配です。
長良川のコースの方は、幸い河口堰を開けてくれたそうで、決勝の日などは風もなく、今まで見た事もないような好コンディションです。問題は暑さ対策です。レース前日の14日(土)、競漕委員会と各団体代表者など関係者が集まって討議を重ね、「温度、湿度などが規定のレベルを超えたらレースを中止する。状況次第で決勝レースを行わないこともやむを得ない」と事前に決めておいたそうで、これは非常に良い対処判断だったと思います。結局、初日午後の敗復は中止、最終日も早朝7時からのレースでしたが、10時半の準決勝を終えたところで決勝戦の中止を決定、決勝進出が決まった各種目の6クルー全てを1位とすることにしました。選手諸君にはちょっと残念な気持ちもあったようですが、正しい判断だったと思います。わたしが観た限り、漕ぎ終わってボートの上で倒れた選手は1人だけでしたが、陸に上がってから気分が悪くなり病院へ行った選手もかなりの人数いたそうです。大事に至らなかったのでホッとしましたが、判断の難しいところです。
「それにしてもオリンピックはこの暑さ対策をどうするんだろう」と2年後に思いを馳せたことでした。
ところで今年は男子143クルー、女子92クルー合計235クルー(537選手)の出漕です。団体数は合計で46団体ですが、単独の中学校での参加は21校、クラブチームが25団体ということで、毎年クラブチームが増えていく傾向は続いています。
いろいろの状況を考えると、この傾向は今後ますます強まると思います。「クラブチームをどう運営・強化し、若い優秀な選手をどう発掘・育成していくか」がこれからの大きな課題だと思います。
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7月24日(火)ちょうど2020東京オリンピックの開会式の2年前に当る日に、「2019年世界ボートジュニア選手権大会組織委員会設立総会」が開かれました。この大会を来年日本で開催することの意味づけ等については後ほど詳しく説明しますが、今回の設立総会で、組織委員会の体制と役員、そして最も重要な実行委員会の組織(専門部会)と担当役員、そして各専門部会のやるべき業務を詳細に決定・承認したわけです。「世界大会を開くとなると膨大な業務をこなさなければならないのだなぁ」とあらためて驚くほどです。
この大会には、日本ボート界の総力を挙げて取り組むのだという意志も込めて、9人のブロック長さんと47都道府県の協会長さんにも組織委員に加わってもらいました。ボランティアもたくさん来ていただかなくてはなりません。更には、2020東京オリンピック・パラリンピックにつながるものだとご理解いただき、よろしくご協力お願いいたします。
今回の「2019年世界ボートジュニア選手権大会」(以下ジュニア選手権と略称)は、日本で開催するFISA主催の大会として3回目になります。(1964年東京オリンピック、2005年長良川世界選手権)来年日本で行うにあたって2つの側面があります。
ひとつは、第53回の伝統あるジュニア選手権としての側面、もうひとつは「2020オリンピック・パラリンピック東京大会ボート競技」のテストイベントとしての側面です。
まずジュニア選手権の概要を説明します。FISA主催で1967(昭和42)年に始まり、ジュニアにとってもちろん最高のレガッタです。2004年のアテネオリンピックの時からは、前年にオリンピックのテストイベントとして開催する慣例になっていて、北京、ロンドン、リオデジャネイロ、そして今回の東京と続くわけです。男女各7種目の全14種目ですが、オリンピックにある軽量級ダブルスカルが無く、代わりに舵手つきフォアが入ります。約50ヵ国から600人程の選手が参加すると思われます。わたしは1985(昭和60)年の第19回ブランデンブルグ(東ドイツ)大会に団長として参加しましたが、世界のジュニアクルーのレベルの高さに圧倒されたことを思い出します。
次に東京オリンピックのテストイベントとしての側面ですが、われわれはこれを非常に重要視しています。なにしろ新設の海の森水上競技場で行う最初の公式大会です。ましてや国際大会です。コース自体のこと、風のこと、波のこと、また選手・観客の輸送のこと、食事のこと、そして何より暑さがどんな具合になるのか、考え出したらキリがありません。とにかく全力を挙げて大会運営にあたり、確認すべきことをしっかり確認しなければなりません。
全国のオアズパーソンの皆さんも、上記の趣旨をご理解いただき、ボランティア等でのご協力をよろしくお願いします。
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今年最初の国際レース参戦となる「ワールドカップⅢ」は、7月13日~15日にスイス・ルツェルンで開かれました。日本からは軽量級4種目(LM4x、LM2x、LM1x、LW4x)の他に数十年ぶりでオープン4種目(M2-、M2x、M1x、W1x)を派遣しました。
個々のレース結果はホームページでご覧頂くとして、全体を見てのわたしの印象を簡単に書いておきます。
厳しい強化練習の結果、軽量級並びにオープンのトップ選手の力は相当上がってきて、世界と戦えるレベルに近づいてきています。ただそれに続く選手層との差がまだちょっとあって、クルーとして強いチームを組めるところまでいっていないな、という感じです。どんな結果になるか心配しながらも期待していたオープン種目では、M1xはD決勝2位(総合20位27人中)W1xはC決勝3位(総合15位72人中)で、現地でレースを観たコーチの言では「戦える」という印象を持てたようです。
オープン種目は8月のアジア大会、軽量級は9月の世界選手権が次の目標です。暑い中ですが、健闘を祈ります。
U23の世界選手権は7月25日~29日にポーランド・ポズナムで開催され、日本からは軽量級3種目(BLM1x、BLM4x、BLW4x)オープン3種目(BM2x、BW2x、BW2-)の合計6種目を派遣しました。これも個々のレース結果はホームページでご覧ください。
A決勝に残ったのはBLW4xだけで、メダルには残念ながら届かず5位(7クルー中)でした。オープンの男女ダブルスカルが特によく戦って、BM2xがB決勝5位(総合11位19クルー中)BW2xがC決勝2位(総合14位19クルー中)でした。
先月のこの欄で、わたしは日本代表選手諸君に「しっかり世界の中での自分の立ち位置を確認して、次なる目標を『自分として』打ち立てることが最も重要だと思います」と書きましたが、今の気持ちもこの通りで変わっていません。
これからの地に足のついた努力を期待しています。
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7月14日(土)「日本オアズマン倶楽部」の創立70周年式典が学士会館で開かれました。若いオアズパーソン諸君の中には知らない方も多いかもしれませんが、終戦後すぐの昭和23(1948)年1月に、ボート仲間(OB、OG)の懇親のための「倶楽部」として創設されたものです。現在会員は260名で、会長は畑弘恭氏(一橋大学昭和26年卒)理事長は安藤敬之介氏(東京経済大学昭和44年卒)が務められ、毎年新年漕ぎ初め会、お花見レガッタの際に物故会員慰霊祭、年末に忘年会などを行っています。長年に亘り、わが国のボート競技発展のために貢献してこられた伝統ある倶楽部です。
今回の70周年式典には60名の会員が出席されました。資料として昭和23年創立時の「創立趣意書」と「日本オアズマン倶楽部会報」の第1号のコピーが配られ、又畑弘恭会長の懇切なご挨拶を聞いて、これまでほとんど知らなかった日本ボート界の歴史に、「なるほど、そんなことがあったのか」といろいろ驚きの連続でした。
出席した60人の卒業年次をみると、昭和20年代卒はたった8人です。30年代卒が35人、そして40年以降の「若手」が17人でした。ご存知のように同じ趣旨の懇親会としてもう少し若手を対象とした「日本ボートマンクラブ」があり、両方に加盟している人も結構多いようでした。
なお、昭和23年の創立発起人の中で今もお元気にしておられる方は、近藤勝重さん(一橋大OB)お1人だそうで、ぜひご出席をとお願いしたそうですが、100歳を超えるご高齢のこともあり、残念ながらご欠席でした。
以上