日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第70信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
第40回全日本軽量級選手権が5月17日(木)~20日(日)、戸田コースで開かれました。心配していた水藻の問題も藻刈り船を何日か入れ、また学連の諸君、そして日本ボートマンクラブの諸兄姉等の献身的なご助力を得て、無事レースを進めることができました。ありがとうございます。
今年も男子6種目、女子3種目に241クルーが参加、4種目で初優勝チームも出て(男子舵手なしペアの早稲田大、男子ダブルスカルのトヨタ紡織、男子エイトの仙台大、女子クォドルプルの仙台大)、賑やかに盛り上がりました。一方でこれまで女子クォドルプルで4度優勝している明治大学などが日本代表の方に選手が選ばれたこともあり、エントリーもなかったのはちょっと淋しい感じでした。
軽量級だけの国内選手権をやっているのは多分日本だけです。1979(昭和54)年に第1回をスタートし、今年がなんと第40回です。日本は世界中で最も軽量級に熱心な国だと思います。1996年アトランタオリンピックに軽量級を導入できたのも日本の尽力が大きかったのは間違いありません。それがご存知のように、2020東京大会では何と男子軽量級舵手なしフォアが廃止です。残念ですがFISAはともかく、IOC内部では今でも「軽量級の存在自体」に疑問の声が消えていないようで、しばらくは世界の動向を注意深く見守っていく必要があるようです。
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今年の日本代表チームの目標ははっきりしています。
軽量級は世界選手権でB決勝(12位以内)に残ること、つまりオリンピック参加枠獲得レベルに到達することです。一方オープンクラスはアジア大会を目指します。そこでのメダル獲得が目標です。
その「2018アジア競技大会」(8月19日(日)~24日(金)インドネシア パレンバン)に向けた日本代表選手が決まりました。軽量級選手権と同時に行われた「2018ジャパンカップ国際大会」において、アジア大会への派遣選手の選考を行い、その結果に基づき5月22日(火)の定例理事会で正式決定しました。派遣選手の総人数枠はJOCによってすでに14名(男女各7名づつ)と決まっていたので、今回種目と代表選手を正式決定したわけです。8種目(男女各4種目)の参加です。
紹介しておきましょう。
M1x | 荒川龍太(NTT東日本) | |
W1x | 榊原春奈(トヨタ自動車) | |
M2x | 栗原誠和(明治安田生命) | 山屋圭太(トヨタ紡織) |
W2x | 米川志保(早稲田大) | 中条彩香(デンソー) |
M2- | 大塚圭宏(NTT東日本) | 高野勇太(NTT東日本) |
W2- | 西原佳(東北大) | 高野晃帆(立命館大) |
LM2x | 武田匡弘(関電美浜) | 宮浦真之(中央大) |
LW2x | 高島美晴(明治大) | 瀧本日向子(明治大) |
男女の軽量級ダブルスカルは、シニアが世界選手権に行くのでアジア大会にはU23から選抜しました。オープンクラスの強化は本格的に始めてまだ日が浅いのですが、目ざましい進歩を遂げつつあるので、力を試す絶好のチャンスです。アジア各国も強くなっていますが、まだ日もあります。大いに健闘されることを祈っています。
ところで、アジア大会のボート競技についてはあまりご存知ない方が多いと思います。少し紹介しておきましょう。
アジア大会そのものは1951年にインドで始まりました。第1回の参加国は11カ国、選手数は500人弱、日本はもちろん参加しています。ボート競技が加わったのは1982年の第9回大会からで、日本は4種目(M4+、M2-、M2+、M1×)に参加、M2-、M2+、M1×は銀メダル、M4+は4位でした。その後毎回参加しており、毎回メダルは取っていますが金メダルは案外少なくて、7個にとどまっています。
アジア大会も大きくなって、近年は45カ国1万人近い選手が集まります。日本はほとんど全ての種目に参加しますので、中でも「ボート強し」と競技の存在感をぜひ高めてきて欲しい、そう願っています。
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5月26日(土)~27日(日)に熊本県菊池市の斑蛇口湖ボート場で開かれた「第11回全日本マスターズレガッタ」は、参加者も1,000名を超えじつに楽しく思い出に残る大会になりました。
まず一昨年2016年にここ斑蛇口湖で開かれる予定だったのが例の熊本地震のため直前に中止となりました。その口惜しさを胸に今回は大会実行委員長の江頭実菊池市長を始めとして、皆さん万全の準備を整えてくれました。そして天気も2日間とも最高のボート日和、深い緑の山懐にいだかれたコースは、目の肥えたマスターズ諸兄姉も絶賛するものでした。
懇親会では地元食材を使った料理もおいしかったですが、(白牛蒡が旨かった)圧巻は、なんといっても7人の娘さん達「花童(はなわらべ)」によるみごとな踊りでした。全国各地の民謡をアレンジした曲に合わせ、次々に衣装を変えながら踊りまくる(佐渡おけさ、泥鰌すくい、阿波踊り等々)、そのスピード感あふれる千変万化の踊りには圧倒され、万雷の拍手でした。
また今年から(世界マスターズに倣い)80歳を超えた漕手に「八角メダル」をお渡しすることにしました。今年の受章者はなんと女性4人を含む50人です。最高齢は「諏訪中漕陵会」の酒井和悦さんと小林宏臣さんで、87歳です。(このナックルフォアクルー5人の平均年齢は86歳!!)
立派なすばらしいメダルなので、わたしも欲しくて再来年には80歳になることだし「よし、漕ごうか」などと考えてはいますが…。
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「オリンピック・ボート選手役員の会」(会長 岩崎洋三さん)の定期総会が5月19日(土)に戸田で開かれ、11名のオリンピアンが参加しました。設立して3年目、少しずつ活動の幅も広がってきて、スポーツ庁などからも声がかかるようになってきたようです。
主な活動は、全国各地で開催されるレガッタの際に、「ボート体験教室」(エルゴ指導)や「オリンピアン講演会」を行うことです。地元の小・中学生やクラブの選手たちにとって、オリンピアンと直接言葉を交し、指導を受けることはずいぶん良い刺激になるようで、広い意味での「タレント発掘活動」「ボート普及活動」として、今後も一層積極的に活動されるよう、平田明久事務局長はじめ皆さんに、わたしからもお願いしてきました。
以上