日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第69信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
2020東京オリンピックへの出場権を得るためには、来年2019年の世界選手権(オーストリア・リンツ)で勝つ(出場権を獲得する)しかないのだと何度か説明していますが、まだピンと来ていない人が多いようですので正確なところを説明しておきましょう。
多くの人の間違いは、主に次の2つのようです。
- 「開催国枠があるから、全種目(あるいは少なくとも何種目かは)出場できる」という間違い
(実質的に開催国枠というのはありません。世界選手権、その後の大陸予選等の予選で1種目も参加権を獲得できなかった場合にだけシングルスカル1名の参加枠が与えられるのですが、日本はそんなことにはまずなりません) - 「大陸予選枠があるから、アジア・オセアニア予選で相当数の種目で参加枠を取れる」という間違い
(3つの間違いがあります
- 大陸予選に参加できるのは2019年世界選手権で1種目(またはゼロ)しか参加枠を取れなかった国に限られます
- そして、大陸予選で参加枠が取れるのは、シングルスカルと軽量級ダブルスカルの2種目(男女で4種目)だけで、他の種目に大陸予選はありません
- しかも、大陸予選で取れる参加枠は、各国1種目だけに限られます。できるだけ多くの国に参加のチャンスを与えようという趣旨です)
以上でお分かりと思います。オリンピックへの出場権は「2019年8月の世界選手権大会で獲得するしかない」のです。厳しい道ですが、選手たちは今必死で頑張っています。よろしくご支援ください。
最後に、オリンピックにおける各種目(男女まったく同じ7種目、合計14種目)の参加クルー枠数と、その参加権を取るための3段階の予選会での参加枠決定数を一覧表にしておきましょう。(エイトがたった7ヵ国しか参加できないというのには驚くでしょう)
種目ごとの参加クルー枠と予選会ごとの参加権決定数 | ||||
種目 | クルー枠 | 予選会 | ||
世界選手権 | 大陸予選 | 最終予選 | ||
1x | 32 | 9 | 18(アジア5) | 2 |
2- | 13 | 11 | 2 | |
2x | 13 | 11 | 2 | |
4- | 10 | 8 | 2 | |
4x | 10 | 8 | 2 | |
8+ | 7 | 5 | 2 | |
L2x | 18 | 7 | 9(アジア3) | |
合計 | 103 | 59 | 27 | 14 |
注① 男女それぞれ同数で、男女合わせた総数はこの倍
注② 1xには参加国枠その他で3クルーが含まれて32になります
注③ 予選会の日程 世界選手権 2019年8月 オーストリア・リンツ
大陸予選 2020年春 未定
最終予選 2020年初夏 いずれかのWCで
× × ×
4月21日(土)に2018年度の顧問・参与会を三菱養和会の巣鴨スポーツセンターで開催しました。日本のボートのことを熱心に考えて下さっている24名の顧問・参与の方々が集まって下さり、協会側からも今取り組んでいる4つの重要な活動状況をご報告しました。3~4の貴重なご意見・アドバイスをいただき、その後、懇親会で旧交を温め、愉快で有益な数時間を過ごしたことです。
わたしからは最初の挨拶で、2013年に東京オリンピック・パラリンピック開催が決まって以来、日本ボート協会がこれを機に絶対に成し遂げたいと考えている3つの使命について、再確認の意味で話させてもらいました。すなわち
- 日本で初の国際レベルのボートコース(海の森水上競技場)を立派に造り上げること
- オリンピックで初のメダルを獲得すること
- オリンピック後も見据え、日本ボート界のレベルを国際級に引き上げるため、選手・コーチ・そしてガバナンス体制の抜本的強化を図ること
いずれも極め付きの難しい課題ですが、その道筋だけでもしっかりつけて、2020年の日本ボート協会創設100周年を迎えることができれば幸いと考えています。
わたしの挨拶の後、次の4つの活動について各委員会からご報告しました。
- 強化活動、及びタレント発掘活動について
- 2020東京オリンピック・パラリンピック及び2019世界ジュニア選手権大会について
- パラローイング統合について
- 100周年記念事業について
それぞれの詳細な説明はここでは省かせてもらいますが、どれひとつとっても大変大きな事業で、執行部及び事務局のみなさんは、かつてないほど忙しい状況です。「選手たちも猛練習に耐えて頑張っているし、われわれも2020年までは何が何でも…」とみんな一所懸命ですので、全国のオアズパーソンの皆さん、どうぞよろしくご支援下さい。
× × ×
最近のボートの話題を3点。
- 戸田コースの水草(藻)の繁茂には、4月29日(日)東商戦を観戦に行った時にそのひどさを実際に見て愕然としました。
戸田の水草は昨年の夏頃から実害が出だして、わざわざ松江の専門業者に頼んで大量の水草刈りをしてインカレ、全日本を乗り切ったのは記憶に新しいところです。今年はもちろん早くから埼玉県側とも打合せを行っていたのですが、天候のせいなのでしょうか、4月早々には早くも水草繁茂が目立ちはじめ、水草刈り船を入れたり、また学連の諸君が深夜まで刈り取ってくれたりしたのですが、水草繁茂の勢いには敵わない、というのが現状です。
ボートシーズンでもあり、レガッタが目白押しです。大切なレースに支障をきたしてはほんとうに申し訳ありません。できる限りの手は打ちます。
ただ、いろいろ情報を集めても、抜本的対策は今のところ見つかっておらず、「対症療法」(刈り取り)に止まっています。お金の面でも焼却処理まで入れると、1トン当り8万円~10万円かかるようで、頭の痛いところです。 - 琵琶湖漕艇場での朝日レガッタに5月4日(金・祝)とんぼ返りで行ってきました。
わたしも関西ボート連盟の会長をしていた2003年まではもちろん毎年観戦していたのですが、その後すっかりご無沙汰で、「多分15年振りかもしれない」という申し訳なさです。ところが、わたしが嵐を持っていったのか、この日は朝から風が強い横風で、特にスタート地点では、エイトやフォアでもまともにはスタートに付けられない状況のようです。そのうちに「沈(チン)」する艇も出だして、本部の競漕委員会では刻々入る情報を受けながら真剣そのものの議論が続き、最終的に2時半頃、芦田文雄委員長の裁断で、中止の決定を下しました。
横でわたしも一部始終を聞いていましたが、「大自然のなか、しかも水上で行うボート競技は、漕ぐ選手も運営する側もほんとうに大変だな」としみじみ感じたことです。
それにしてもこの朝日レガッタは、種目がすごく増え、中学、高校、大学、社会人、マスターズ、そして今年からパラローイングも加わってなんと25種目という多彩さです。おそらく世界一幅広いレガッタじゃないでしょうか。驚きました。
夜は競技役員のみなさんの懇親会に参加して、関西地区の艇友諸君との懇談を大いに楽しんできました。
どうもありがとうございました。 - 4月29日(日)の日本経済新聞朝刊の日曜版に「The Boat Race」と題する記事が載りました。読んだ方も多いと思いますが、3ページにわたる大記事で、ボートレースの写真もすばらしく、おそらく今まで新聞に載ったボートの記事としては最大のものだと思います。
記事の内容は、3月末に行われたイギリス伝統のボートレース、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学のテムズ川での対抗戦を取材したものです。1829年に第1回が開催され、テニス、ラグビー、ゴルフよりも歴史は古く、アマチュアスポーツの象徴的存在であること、両校とも文武両道をモットーとしていること、両校の対抗戦の代表に選ばれると栄誉ある「ブルー」の称号が与えられること等々、実に充実した記事でした。「日本のボートレースの記事でないのが残念だ」といささかの不満はありますが、とにもかくにもこれだけのボートの記事が載るのは嬉しいことです。
なお、来年6月の「海の森水上競技場」でのこけら落としの記念大会には、両校クルーを招待する予定で、内諾は得ているようです。楽しみですね。
以上