日本ボート協会JARA OFFICE
全国のオアズパーソンへの手紙(第66信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
機関誌「Rowing」が最近ずいぶん変わって、「戦う機関誌!」のイメージになってきました。今号(1月20日発行 No.544号)もなかなか読み応えがあります。
まず表紙がいい。11月の全日本新人選手権女子シングルスカルのメダリスト3人に、『PLAY TRUE』というアンチ・ドーピングの旗を持たせた写真ですが、先般のカヌー選手によるドーピング剤投入事件(なんとも情けない事件!)を背景に、訴えどころの明快な印象的な表紙でした。
内容では、わたしが一所懸命読んだ記事が3つあります。まず強化委員会による「2017年度強化活動総括」です。いまの日本代表クルーの世界でのレベルはどのあたりになるのか、そして今年は何を目標に強化・トレーニングをするのか、この点が具体的かつ率直にまとめられていて、よく分かります。
次に「ギザビエNSD講演録」です。このところ、ギザビエさんの講演録などが毎号載って、彼の考え・狙いが少しずつ分かってきました。今回は、あの厳しいトレーニング(B1・B2・そしてC2)の背景にある、世界最先端のスポーツ科学研究の解説です。身体改造とローイング技術について分かり易く(といっても歯ごたえありますが)述べています。『Rowing技術の日本語テキスト』を一日も早く作ってほしいものです。
3つ目は「シリーズ オリンピアンの言葉」です。世界で戦った名選手の言には、必ず聞くべきものがあるとわたしは思います。今回は野村雅彦さん(1988年ソウル五輪)と駒崎茂さん(2016年リオパラリンピック)のお二人の話ですが、どちらも内容の濃い、いいお話です。
なお、全国各地のボートのニュースが幅広く載るようになったのも目立つ特色です。実に興味深い。全国9ブロックのリポーターの皆さんが、積極的に記事を送ってくれているようで、本当にありがとうございます。
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コンセプト社のローイングマシーンが開発されたのは、1985年頃でしょうか。強化部長をしていたわたしは、「これはいい!」とばかり、すぐに輸入して自宅のベランダで毎日漕いだものです。すぐ腰痛になり断念しましたが…。
当時強化部員だった故古川宗寿さんたちと相談し、1989年に「第1回マシンローイング大会」を開催しました。最初は関東と関西の2ヵ所だけで、参加選手は合計で607名でした。今年はなんと「第30回」です。A大会が9ブロックで、B大会が全国25ヵ所で開催され、4,500人ほどの参加見込みだそうです。
1月14日(日)、近畿ブロックA大会を観に、大津市のウカルちゃんアリーナ(滋賀県立体育館)に行ってきました。広い会場にアップ用も含めて130台近いローイングマシーンが据えられ、2階観覧席にも人がいっぱい、正面スクリーンには選手たちの戦いぶりが映し出され、赤青黄の照明がクルクル回る、応援の声も賑やかで実に華やかな演出です。正直、予想外で驚きました。
大会運営は認定NPO法人瀬田漕艇倶楽部の若手メンバーがやってくれています。阪口雅弘実行委員長ほか5人の委員のみなさんにいろいろ話を聞きました。
「単なる記録会じゃつまらない。みんなが盛り上がる印象的な大会にしようと、実況アナウンス、スクリーン映像、照明など担当を決めて工夫しています。小学生も参加できるよう、またパラローイングの選手も13人参加しています。今年もデンマークのトップクラス選手7人とコーチ2人を招待し、また、去年引退したニュージーランドのボートの鉄人エリック・マレイ選手(ロンドン、リオのM2-金メダリスト)も来てくれました」と、実に気合の入った運営ぶりで、若い人達の力と意気込みを感じました。
「エリートレース」というトップレベルの選手のレースも組まれています。高校男女、一般男女、マスターズと5つのカテゴリー毎に、16人を8人ずつ向かい合わせにしてのレースです。周囲は応援団で黒山の人。好敵手同士の戦いは最後の一漕ぎまで気の抜けない壮絶な戦いで「マシンローイングでもこれ程凄いレースができるのか!」と一観客として堪能しました。
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マシンローイング大会を観たあと、「瀬田漕艇倶楽部」の艇庫へ足を伸ばしました。故古川宗寿さんが執念を持って私費を投じて建てた「Furukawa House」が見たかったのです。同倶楽部代表理事の太田俊二さん、故古川さんの奥様古川ゐ喜子さん、その他の皆さんに案内してもらいました。
クラブハウスはシンプルな平屋でムダな装飾など一切ない堅牢な建物です。「古川さんらしいハウスだ」と感じました。古川さんはクラブ生活を充実させ、活性化するためには「クラブハウスはどうしても欲しい」と強く思っていたようです。太田代表はじめ集まってくれたクラブメンバーは口々に「これができてメンバーの活動パターンが変わりました。いつ来ても誰かに会えるし、夜7時過ぎの会議も増えました。40~50人の集会もできます。みんなで集まれる場所って本当に大事ですね」と身を乗り出すように話してくれました。
瀬田漕艇倶楽部の艇庫はほんとうに綺麗で、汚れたボロ布などもってのほか、全ての道具は常にあるべき場所にある、完璧な整理整頓ぶりです。多分世界一きれいな艇庫だと思います。伝統となった‘しつけ’がしっかり生きています。
わたしたちが狙っている「ボートクラブ」の先達として、今後とも益々の発展を期待しています。
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最後に1月中のボートに関する話題をいくつか。
- 1月7日(日)は恒例の「初漕ぎ」で戸田へ出かけましたが、今年も腰痛がこわくて漕ぐのは遠慮です。情けない話です。
- 1月10日(水)これも恒例のNHK主催のアマチュアスポーツ団体の新年会に木村理事長たちと出席。他競技の人達と会える貴重なチャンスで、近づく冬季オリンピックに向けて、今年はスケート関係の人達(橋本聖子さんなど)が元気でした。
- 1月15日(月)ナショナルチームは長野県でスキー合宿です。2年目でみんなだいぶ慣れてきて、楽しんだようです。ギザビエNSDは、インフルエンザにかかり、途中で帰京した由。
- 1月20日(土)は日本ボート協会の新年会、全国から顧問・参与の方も含め130人ほどが集まり大盛会でした。
- 1月22日(月)今年の日本スポーツ賞(読売新聞社主催)のボートの部で、NTT東日本のエイトクルーが最優秀賞を受けました。
以上