日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第61信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
ヨーロッパ北部のバルト海に面した小さな国、リトアニア・トラカイで行われた今年の「U19世界選手権」(8月2日~6日)には日本から2クルーが参戦しました。
結果は、まず少年女子ダブルスカル(石垣優香/法政大・都立本所高卒、西田結惟/岐阜県立加茂高)がFinal Bの5位に入り、総合では28クルー中11位で目標を見事にクリアーしました。また少年男子シングルススカル(遠山秀雄/京都市立伏見工業高)はFinal Dの2位に終わり、目標には届きませんでしたが、総合では37クルー中20位という成績なので、わたしはギリギリ合格レベルだと思います。
昨年は5クルー派遣しましたが今年は2クルーに絞りました。これは昨年11月に発表した「2017年日本代表選手(シニア・U23・U19カテゴリー)選考方針」に基づいたものです。
この方針は、「Rowing No.537 2016.12発行」に載っているので読んでおいてほしいのですが、簡単に言うと「世界で戦う上での基準(Ideal Time)を設定し、それへの到達度に応じて派遣の可否を決定する」ということです。すなわち日本でトップになっても世界のレベルに達していない選手は派遣しない方針としたのです。
ただこのレベルに達する可能性の認められる選手に対しては、別途そのレベルにふさわしい他の国際大会に参戦させ、経験を積ませて強化する道は更に広げることにしています。
これまで1971年の初参加以来、毎年U19世界選手権に選手派遣を続けてきました。国内予選で勝ったクルー、あるいは成績上位の選手で編成したクルーを、自動的にU19世界選手権に派遣してきたのです。目的はモチベーションアップと若いうちに国際レースの経験を積ませようということです。その結果として、成績は残念ながらかんばしくありませんでした。例えば昨年、オランダ、ロッテルダムでのU19世界選手権の成績は次の通りです。
JW1xを除いては、まったく残念な結果で、今年の2クルーの成績は、それなりに手応えあるものだったことをご理解いただけると思います。
種目 | JW4x | JM4x | JW2x | JM2x | JW1x |
順位 | 15位 | 23位 | 21位 | 25位 | 13位 |
出場数 | 19 | 24 | 23 | 30 | 23 |
各高校の関係者のみなさんには、大きな変革でご迷惑を掛けたこともあるかと思いますが、日本ボート界を大きく底上げしようとするXavier NSDの新方針をどうぞご理解いただき、ご協力をお願いする次第です。
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国際ボート連盟(FISA)施設担当、スベトラさんが来日されるのは、何十回目になるでしょうか。今回も諸会議のため来日したのを機に、8月9日(水)、FISA、JARA、組織委員会、そして東京都オリンピック準備局の4者合同で海の森ボートコース建設工事進捗状況の現地視察を行いました。今回は2隻の船に分乗して、海上からの視察です。
わたしは、ちょうど半年前の二月、FISA臨時総会の前に陸上から視察したのですが、その時はスタート側とゴール側両方の水門建設のための杭打ち込み工事(直径1m超の鉄管を60mの深さまで打ち込む)と廃棄物荷揚げ桟橋の撤去工事が中心でした。半年たってスタート側の水門は完成、またゴール側の水門も工事用船舶の通路部分を残して杭打ち込みは終わっていました。また荷揚げ桟橋の撤去も終わっています。
現在はゴール近くのメインスタンド、艇庫等の建設予定地の地盤整備と、スタートからゴールまでの幅5mの伴走路の建設工事が進行中でした。全体的に今は基礎工事の段階なので、陸上施設がどうなるのか、イメージはまだつかめません。
コースの水面の方は、両端の水門がほぼ閉鎖されたおかげで外洋の影響は全く受けず、波はほとんど無い状態です。モーターボートの返し波がどうかも注意してみましたが、幅200mあるので全く気になりません。あとは問題の風の影響ですが、両側の埋め立て島が30mの高さがあるので水面付近ではずいぶん減衰されるようです。ただ実際はどうなのか、今年もいろんな地点で測定してもらっています。場所によって強弱があるに違いないので、個別具体的に対策を講じていくことになるでしょう。
視察終了後、スベトラさんとJARAメンバーとで昼食をご一緒しました。「工事は順調ですね、水面もおだやかでしたし…」と安心した口振りでした。
スベトラさんはXavier NSDご夫妻、特に奥様とは近しいようで、「フランスでの世界選手権の時もXavier夫人には大会運営にずいぶん協力してもらいました。大層頼りになる方ですから、東京大会でもぜひ何か役目をお願いしたらいいですよ」というサジェスチョンでした。
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戸田コースに藻が大量発生し、全日本大学選手権大会の開催が危ぶまれる程になったのには驚きました。最初は学連の諸君が刈り取ってくれていましたが間に合わず、専門の業者(松江城のお堀の水草刈りが専門だそうです)に頼んで、4日間で軽トラック100台分以上を刈り取り、8月31日(木)予定通りなんとか開催にこぎつけました。
例年通り男子8種目、女子4種目で覇を競い、男子は今年も日本大学が6種目で優勝し、総合12連覇を果たしました。一方女子は、明治大学が2種目を制し、総合でも早稲田大学の9連覇を阻み、久し振りの優勝です。
どのレースも接戦続きで見応えがありましたが、ただ良コンディションの割にはタイムが平凡なものが多く、わたしとしては正直なところ不満足でした。例えば男子エイトでいうと5分40秒はぜひ切って欲しかったし、また男子シングルスカルなら、7分を切るレベルで何人かが争うようにならないと、とても世界と戦うレベルとは言えないのです。10月末の全日本選手権までまだ2ヵ月近くあります。一歩でも二歩でも前進してくれることを望みます。
今年から表彰式のスタイルを変え、表彰台を使用しないことにしました。国際標準に合わせたのです。どんな感じになるか心配していましたが、かえってスッキリして、わたしは好印象を持ちました。皆さんはどう感じられたでしょうか。
最後にもうひとつ。オックスフォード盾レガッタは、NTT東日本が優勝し、3連覇を果たしました。優勝はもちろん立派ですが、わたしが特に感心したのは、NTT東日本は9月4日(月)からタイで開かれるアジア選手権大会の日本代表チームに、なんと5名の選手を出しているのです。それで優勝するのですから、たいした選手層の厚さですね。
以上