日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第60信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
日本代表チームは今年、海外での大会、6試合に参戦を予定しています。7月までに、ワールドカップ第2戦(ポーランド)ワールドカップ第3戦(スイス)そしてU23世界選手権(ブルガリア)の3大会が終了しました。
各大会での日本代表チームの戦績はホームページでご覧ください。特に最近のホームページは読み応えがあって、ワールドカップ第3戦については選手一人ひとりの戦い終わっての感想・コメントが載っていて、「なるほど選手はこう感じ、考えているのか」と新鮮な気持ちで興味深く読みました。ギザビエNSDのコメントも載っていて、これももちろん大変参考になります。
わたしは一戦一戦の結果に一喜一憂はしません。現在の強化委員会がギザビエNSDの考えをベースに組み立てた〝国家レベルでの日本ボート強化策〟に納得し、信頼しこれで進むべきだと考えているからです。ただ強化担当の現場第一線は(わたしが昔強化本部長を務めた時の経験からも)、どうしてもあせり気味になるし、外部からの声がひどく気になります。そこのところをうまく防護しコントロールするのがわたしの役目だと思っています。
7月末発刊の「RowingNo.541」にも、今の強化方式=ギザビエ戦略を理解するためのいい記事がいくつか載っています。ギザビエNSD本人の講演録、長畑芳仁強化委員長兼タレント発掘委員長による、よくまとまった分かりやすい「ギザビエ戦略」の解説、さらには二人のオリンピアン(大石綾美さん、阿部肇さん)の講演などです。一読をお薦めします。
なお、今年は「海外育成モデル事業」として、ジュニアクラスの有望選手の海外派遣事業も積極的にやっています。2月の香港合宿、4月のドイツ国際ジュニア戦参戦、5月にフランスジュニアクルーに入り込んでの練習経験、6月のデンマークでのレース参戦などです。今までは考えられなかったような充実ぶりで、必ずや成果に結びつくものと確信しています。
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「全国ボート場所在市町村協議会」が創立30年を迎え、7月14日(金)福井県美浜町で記念式典が開かれました。会長の田中幹夫(富山県南砺市長)さんから30周年の感慨を込めたご挨拶があり、つづいて「創立30年記念功労者表彰」が行われ、長年、各市町村でこの協議会ひいてはボートの発展に多大の貢献をされた個人7名、団体7つが表彰を受けられました。本当におめでとうございます。
余談ですが会場となった美浜町生涯学習センター「なびあす」はすばらしい建物で、その立派さには皆驚いていました。
また「創立30年記念誌 -拡げようボートで繋げる地域の絆- 」が発刊され、皆さんに配られましたが、実に充実した内容で、一読をお薦めします。
この記念誌を参考にして、当協議会の成り立ちを簡単に紹介しておきましょう。
当協議会の生みの親である鎧塚一さん(当協議会最高顧問)は、長年、日本ボート協会の普及部長を務められた方ですが、他競技と比べると、ボートの普及活動はまだまだ遅れていると感じていました。そこで「まず中学生からだ」と考えて、1981年に中学生の選手権大会を中部地方で始めました。第一回の参加校はたったの7校で、その後も思ったようには参加が増えませんでした。
「中学校の参加を増やすためには、やはり自治体=市町村を巻き込むべきかな」と考え出した時に、たまたま福井県美浜町長(綿田さん)から、鎧塚さんに、「ボート場を活用した地域活性化を考えたいのだが…」と相談があったのです。その頃、長野県下諏訪町が国体開催後の遺産としてのボートコースを活かして「町おこしとしての住民レガッタ」を活発にやっているという評判だったので「よし、皆で視察に行こう」と中部地区の漕艇協会が一緒になって視察に行ったそうです。それが契機となって1988年に「ボート場所在市町村協議会」の結成に至ったのです。「自治体と一体となったボート普及活動の推進」という理念を掲げ、当初は中部地区の9市町に限ってのスタートでした。30年たった現在は、この地図にあるとおり32市町村が加盟しています。
他競技に類を見ないこの組織の主たる活動内容は
- ボートサミット(首長会議)
毎年1回、加盟市町村の首長が集まり、ボートによる町おこしの実情を報告し、議論します。 - 議長懇話会
毎年、交流レガッタの初日に、各市町村議会の議長が集まり、町おこしのアレコレを情報交換します。 - 交流レガッタ
毎年、「全国市町村交流レガッタ」を会場持ち回りで開催しています。今年は9月23日、24日に秋田県由利本荘市です。「議員対抗レース」もあり、前夜祭を含めてたいへんな盛り上がりです。
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今月開催されたレガッタなど、ボート関係の話題をいくつか紹介しておきます。
- 7月2日(日)「第8回お台場レガッタ」が開催されました。年々人気が高まり、出場枠のクジに当たるのが大変だそうで、事務局の女性も「当たらなかったら可哀相でクジを引くのがこわい」とのこと。これを機にクルーを組むのが楽しいようで、例えば「高校OB、OGクルー」(浜松北高、本荘高、沼津東高、熊本学園大学付属高、清水東高など)が目立ちますし、珍しいところでは水泳、スキー、ボート3競技の元オリンピック選手の混成フォアとか、かつての日本代表女子オリンピアン8名が揃ったエイト、あるいはパラローイングのクルーも2杯出ています。特に嬉しいのは、中学生クルーが6杯、小学生クルーが9杯出ていることで、東京や神奈川のボート教室の活動が定着しつつある証だと思います。
- 7月12日(水)先頃急逝された前理事・鈴木仁さんの「お別れ会」が如水会館で開かれました。ボート関係者や弁護士仲間など約100人が別れを惜しみました。
鈴木さんは(お台場レガッタにも出漕していた)浜松北高でボートを漕ぎはじめたそうで、恩師の田中高志先生はじめ沢山の仲間達が集まり、校歌を斉唱して送ってくれました。奥様のご挨拶でも「日本のボートのために尽力できて嬉しい」と日頃話されていたそうで、あまりにも早い死は、本当に残念でなりません。 - 審判の隅元幸治さんが、「平成29年度スポーツ功労賞顕彰(審判)文部科学大臣賞」を受賞されました。長年に亘る審判としての活動、特に国際審判員としての活躍が認められたものです。本当におめでとうございます。
- 「第37回全日本中学選手権競漕大会」が7月29日(土)、30日(日)に福井県美浜町の久々子湖で開かれました。
秋田から大分まで28都府県から、45団体(中学校20校、クラブチーム25)216クルー541名の中学生諸君が参加しました。わたしは、2日目の順位決定戦と決勝戦しか観られませんでしたが、見ごたえのある熱戦つづきで、特にトップクラスのクルーは体格も立派だし漕力も高校生に引けをとらないほどで「力をつけたなぁ」と感じたことです。
とは言え、まだみんなボートに首を突っ込んだばかりです。勝ったクルーも、残念ながら勝てなかったクルーも、ボート人生は全てこれからです。ボートは実に奥の深いスポーツで、高校生、大学生、社会人と漕げば漕ぐほど味が出てきます。息長くボートを漕ぎ続けることを期待します。 - 最後に中学選手権に因んで美浜町についてもうひとつだけ。
福井県がわが国有数のボート大国であることは皆さんご存知のとおりですが、その上に、近年ここ美浜町が将来の有望選手を発掘し育成する「タレント発掘事業」の一大拠点となっています。
毎年15回程もタレント発掘合宿が美浜で行われています。有望な中学生にとって美浜町は憧れの地であり、なんと地元を離れて美方高校に「留学」してくる選手が何人もいるのです。今年も岩手と新潟から留学してきた2人の女子選手を、田辺義郎さん(美浜町ボート協会会長)が自宅に下宿させてくださっているそうです。ほんとうに頭が下がります。どうぞよろしくお願いします。
以上