公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第48信)

2016年8月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

リオデジャネイロ・オリンピックがいよいよ開幕です。

ボート日本代表の2クルー、LM2X(大元英照、中野紘志)とLW2X(大石綾美、冨田千愛)は、7月いっぱい、フランスのエギュベレットで事前合宿をして、8月1日にブラジル入りをします。

男女とも20クルーが参加します。日本クルーが目標の決勝Aに残るためにはどういうレース・プログラムになっているのか説明しておきましょう。

まず8月7日(日)の予選(5クルー×4レース)で2位に入れば準決勝ABに進みます。万一3位以下だと、8日(月)の敗者復活(6クルー×2レース)に回り、そこで2位に入れば準決勝ABに進むことができます。10日(水)の準決勝AB(6クルー×2レース)で3位までが、目標の決勝A進出です。決勝Aは12日(金)に行われます。

両クルーとも決勝A進出を果してくれるよう祈っています。

なお、オリンピックでは、全クルー20位までの順位決定戦を行います。 ちなみに、2012ロンドンオリンピックでは、LM2X(武田大作、浦和重)が予選3位で敗者復活戦にまわり、最終結果は12位、またLW2X(岩本亜希子、福本温子)は同様に予選3位から敗者復活戦にまわり、最終結果は、男子と同じ12位でした。

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オリンピック日本代表の壮行会を、7月9日(土)岸体育館内のスポーツマンクラブで開きました。予想をはるかに上回る、160名以上の方々が激励に集まってくれて、たいへんな熱気でした。

スポーツ庁、JOC、JPC(日本パラリンピック委員会)、日体協、組織委員会などの代表者、そして各代表選手の所属団体の方々、ご父兄、そして多くのボート関係者等々。各来賓の方々のご挨拶では「オリンピックとパラリンピックとを一緒に壮行会で送り出すのは、ボートが初めてだ、すばらしい」「簡素でアットホームな雰囲気で、集まった人達の熱気がすごく感じられる。ボートらしい、いい壮行会だ」といった声が聞かれました。

組織委員会の代表として室伏広治さんが挨拶されましたが、ちょっと興味がわく話でした。

「若い知人がボートの『タレント発掘』に挑戦しました。筋力は抜群なのですが持久力がなくて、結局合格しませんでした。人間の筋力は天性のもので、トレーニングをしてもあるレベル以上にはいきませんが、持久力は相当伸ばせる可能性があります。彼のような資質のアスリートを拾い上げ、育てるシステムを、ボートでもぜひ考えてほしい」

というものです。早速、強化委員会の崎山俊夫タレント発掘委員長に検討をお願いしておきました。

それにしても、室伏さんは流石にオーラがありますね。

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ロシアのドーピング問題で、世界のスポーツ界は大騒動です。スポーツ仲裁裁判所(CAS)のロシア陸上チームのリオデジャネイロ五輪への参加禁止決定、さらに世界反ドーピング機関(WADA)による、「ロシア選手団の全面参加拒否」勧告を受けた国際オリンピック委員会(IOC)がどうするのか、と見守っていましたが、IOCのバッハ会長は、全面参加拒否には踏み込まず、(一部条件つきで)各国際競技連盟(IF)の個別判断にまかせる、という決定を下しました。IOCとしては一種の逃げと言わざるを得ないでしょう。

さて、それでは、世界ボート連盟(FISA)としてはどうするのか。われわれのいちばん気になるところです。

FISAの医科学委員を務めている日浦幹夫さん(当協会理事)にいろいろ聞きましたが、「結論はまだ(7月26日現在)公表されていないが、いずれにしろ、FISAのドーピングルールに従ってドーピング委員会を設置し、個々の選手の参加の可否は決められる筈だ」ということです。

その後のFISAの発表によれば、ロシアは男子が3種目(M4-、M8+、LM4-)、女子が2種目(W8+、LW2×)参加権を持っていましたが、IOCの基準と、WADAのIndependent Person (IP) reportの内容と照らし合わせた結果、リオデジャネイロ・オリンピックに参加できるロシアの選手は6人のみに絞られました。さて、どうなるでしょうか。

ドーピングははっきりと悪です。特殊な薬物を使って身体強化を図るなど、スポーツ精神からの完全な逸脱です。薬物ドーピングのいきつく先は、遺伝子操作、さらにはサイボーグ造りにまで至るのではないかと、わたしはそこまで懸念しています。

ただ注意してほしいのは、「うっかりドーピング」です。問題ないと素人判断した薬でひっかかる例もあるので、専門家に必ず相談することが大切です。

日本のボート選手は、健全で栄養価の高い食事を心掛け、科学的合理的な猛練習でメダルを目指す、このことをしっかり胸に刻んでほしいと心から思います。

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第36回の全日本中学選手権が今年は石川県津幡のボートコースで開催されました。16年振り3回目の開催ということですが、水面が近くて、漕ぐによし、観るによしのいいコースだと思います。

決勝が行われた7月24日(日)は、ちょっと横風が強かったのですが、若い中学生諸君は元気いっぱい、なかなか見ごたえのあるレースも多く、毎年欠かさず観ているわたしには、彼らの漕力が着実に上昇・改善してきていることが実感できる1日でした。

参加クルーは秋田から宮崎まで25都道府県の40団体です。ちょっと驚いたのは、ちょうど半分の20団体がクラブチームになったことです。いろいろな理由があると思いますが、単独で出漕できる中学校が20校になったということです。ただ中学校の実態も様々です。部員数が100名を越える(あるいは近い)滋賀県の瀬田中学校、瀬田北中学校、静岡県の入野中学校といった名門校がある一方、部員が2名だけの佐鳴台中学校(静岡県)、唐津第一中学校(佐賀県)も出てきてくれています。また、鎧塚一顧問に聞いたことですが、楡原中学校(富山県)では生徒数が全校で40名ほどに減ってしまった中で、ボート部員が18名という凄い学校もあるようです。

全国で中学生・高校生を受け入れるクラブが増えているのは、わたしは歓迎すべきことだと思います。せっかく中学校でボートを漕いだのに、近くの高校にボート部がなくてボートをやめてしまう、というケースを時々耳にするからです。いい指導者が継続的に地元地域のクラブで育成・指導してくれる、というのが理想なのです。

各クラブの皆さん、どうぞよろしくお願いします。

表彰式のあとのわたしの挨拶で、「2020東京オリンピックの前年、2019年に新しい『海の森ボートコース』で、日本で初めての世界ジュニア選手権を開催することになっています。まさに今日漕いだ皆さんが目標とすべき大会ですので、大いに練習を積んでメダルを目指してください」と激励しておきました。

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「全国市町村交流レガッタ」のユニークさについては、これまでも何度かこの欄で紹介してきましたが、その大元となる「第29回全国ボート場所在市町村協議会首長会議」が、7月14日(木)に滋賀県大津市の琵琶湖ホテルで開かれました。

7代目会長の富山県南砺市長の田中幹夫さん(八尾高校ボート部OB)の歯切れのいい司会で、30の市町村の首長さん(一部は代理)による議事が進んでいきます。

わたしとして、いちばんの聞きどころは、30の市町村それぞれにおけるボートの普及活動、まちおこし活動の実情報告です。市町村民レガッタを、キチッと継続していくのは決して簡単ではないと思いますが、この30市町村は、いろいろ工夫をこらしながら頑張ってくれています。オリンピック選手などを輩出したところは、やはり嬉しそうですし、また長野県下諏訪町のように、パラリンピックの強化合宿に大層尽力してくださったところもあります。ありがとうございます。

この会は、昭和63(1988)年に、中部地区の9市町村が「ボートによるまちおこし」を狙いとしてスタートしました。

仕掛け人は現最高顧問の鎧塚一さん(元・日本ボート協会普及部長)で、「まちおこし」を旗印に、首長・議長を巻き込んだということは、実にユニークですばらしい発想だと、わたしは今更ながら感服しています。

日本の市民スポーツとしてのボート普及に果したこの会の貢献度合はたいへんなものでしょう。この30市町村は、もちろん毎年「市町村民レガッタ」を開催していますが、この市町村以外にも(皆で数え上げてみたところ)あと少なくとも35~36は開かれているようです。全国で65~66の「市町村レガッタ」があるということです。

まだ加盟していない市町村には、何とかこの会に入ってもらいたい、そう願っています。

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以上