日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第45信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
軽量級ダブルスカルの男子と女子、2種目のリオデジャネイロ・オリンピック出場が決まりました。選手ならびにスタッフ諸君、まずはおめでとう、そしてご苦労様でした。
ただ、今回はいつものオリンピックの出場権獲得時とは、ちょっと違った印象を受けました。
4月25日(月)韓国・忠州でのアジア大陸予選を観戦・応援しに行ってきたのですが、その時に感じたことです。2位だった男子、1位だった女子、それぞれが陸にあがってすぐにわたしは選手たちと話をしたのですが、両クルーとも単純な喜びの色はないのです。そして各選手とも一様に「あと3ヶ月あります。もっと強くなります」といった趣旨のことを、こもごも話すのです。わたしはなるほどと思いました。
わたしの受けた印象はこうです。
この両クルーにとって目標はオリンピックに「出る」ことではなくて、オリンピックで「A決勝に残る」ことなのです。だから、今回の勝利はあくまでそれに至る一過程にすぎず、むしろ今回のレースで分かった「まだ足りないところ、強化すべきところ」で頭がいっぱいなのだろうと思われました。
そして重要なことは各選手とも、今の練習を続けていけば、「必ずもっと強くなれる」と信じている顔つきでした。
これは実に大切なことです。その信念を大事にして、勝負の日まで、しっかり地に足のついた練習に励んでください。
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次の期待は、軽量級男子舵手なしフォアです。5月22(日)~24日(火)にスイスルツェルンで世界最終予選があり、そこで2位に入ればリオ五輪出場権を得られるのです。
彼らは早々とヨーロッパで合宿中ですが、去る4月15(金)~17日(日) 前哨戦ともいうべきワールドカップⅠ(伊バレーゼ)に初めて参戦しました。結果は16クルー中11位でしたが、予選、敗復、準決、B決勝と4レースの対戦相手とタイムをみただけの、わたしの印象を以下に述べておきます。
(彼ら選手やコーチの話はまったく聞いていませんので、そのつもりで読んでください)
まず11位だったといっても、すでに出場権を持っている国が多いので、実質の競漕相手は、ドイツ(5位)ポーランド(8位)スペイン(10位)の3カ国です。この中で2位になればいいのです。
問題はどのくらいのタイム差があるのかですが、ドイツとは同一レースで一度も戦っていないのでわかりません。推定5秒くらいでしょうか。ポーランド、スペインとは最終B決勝で戦っていて、ポーランドに2秒66、スペインに1秒16の遅れです。なんとかなりそうなタイム差ではないでしょうか。
率直に言って、LM4-については昨年までは差がありすぎる感じが拭えませんでした。しかし、今年はほぼ対等に戦えるところまできたと思います。
今年のクルーは、大学生2人が乗る若いクルーです。潜在可能性は十分にあります。あと1ヵ月、「必ず5秒強くなれる」という信念で、練習あるのみです。
期待します。
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今回の韓国・忠州訪問では、レース観戦の合間に、何人かの方とお会いし、また忠州ボートコースの設備、特にポンツーン(浮き桟橋)をじっくり視てきました。簡単にご報告しておきます。
- FISAのジャン・クリストフ会長がいらしていました。
全世界での主催レースのほとんどに顔を出す、その行動力にはほんとうに感心します。若さでしょうか。
彼は、今度日本代表クルーのコーチになったギザビエさんとは、同じフランス代表チームに属したこともあり、親友のようです。「日本のコーチになってくれたので、日本との絆が更に太くなった、嬉しい」と仰っていました。クリストフ会長には、現在FISAで検討が進められているオリンピック種目の変更に関して、「特にLM4-をなくする案には、日本としては絶対反対だ」と強く訴えておきました。しかしながら、会長は、「男女同数にするために男子を55名減らすには、有力な案である。IOCからも同様な指摘を受けている」との返答でした。 - ARF(アジアボート連盟)の事務総長のツァン・イン女史にお会いしました。5月9日(月)にARF会長のワンさんが来日し、お会いすることになっているので、その事前顔合わせです。わたしとしては、問題のオリンピック種目見直しについて、ARFとしてどう対応するかをワン会長とじっくり話し合いたいと思っているのです。ツァン・インさんによると、ワン会長は、日本の大学ボートが盛んなことに関心を持ち、「その点を聞きたい」と言っておられるようです。
- FISAのマイク・タナーさんの案内で、ポンツーンに係わる設備をしっかり視てきました。特にスタート周辺の、ポンツーン上に建てられた発艇塔や、発艇桟橋は、合理的でしかも使い勝手がよさそうな設備で、マイク・タナーさんも「現時点では、ここの設備が一番だ。スベトラ施設部長も、東京の海の森コースにこのプランを推薦している」と言っていました。また、TV撮影用の自動車が走れる、幅6m程のポンツーンが、水上に1,200mほど走っていて、これも驚くほど立派なものです。
海の森ボートコース建設に参考にしたいと思っています。
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4月16日(土)、恒例の「顧問参与会」を巣鴨養和会で開催し、46名のみなさんが出席されました。
協会の方からは、今もっともホットな事項4つをそれぞれの委員長から報告、説明しました。すなわち
- 強化の現状と今後の方針
- 「海の森ボートコース」の建設実施計画
- 国際関係の行事予定と進め方
- 強化募金について
みなさんからいくつかのご意見をいただいた後、懇親会に移り、ここでも旧交を温めつつ、活発な意見交換が行われていました。
この会のメンバーは、長年日本ボート界の運営に携わった経験を持ち、しかもボート大好きなベテランばかりです。年齢的にもわたしたちと近い方が多く、始終川で顔を合わせている仲間といってもいいかも知れません。
一方で、現役のアスリート諸君の考え・思いがわが日本ボート協会の組織の運営に十分に取りいれられているのだろうか、と反省してみると必ずしも十分とは言えないように思われます。
そこでJOCの指導もあり、4月1日付で「アスリート委員会」を新設し、加藤直美さんに委員長をしていただくことにしました。
- アスリートの声を組織の意思決定に反映させる
- アスリートとの対話による意思疎通が行われる環境をつくる
この2つが主な使命です。やるべきことは沢山あると思います。現役のアスリート諸君からも、ぜひ積極的にアプローチしてください。
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最後になりましたが、熊本大地震で亡くなられた方に、心から哀悼の意を表します。また被害にあわれたみなさんにお見舞い申し上げます。ボート関係の方々の状況はいかがでしょうか。施設にも被害がおよんだのではないかと心配しております。
5月21(土)~22日(日)に菊池市班蛇口湖で予定していたマスターズ大会は、いったん中止にします。その後の予定については、現地とも協議して決めていきたいと思います。
以上