公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第39信)

2015年11月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

「練習は不可能を可能にする」このことばを、今回のラグビーW杯で南アフリカを破った日本代表チームは実証してくれたと思います。われわれボート関係者にも勇気を与えてくれる勝利でした。

外国人選手が10人(うち5人は帰化)いるとか、8割がプロ契約をしているなどボートとは違う点も多々あります。しかしテレビで報道された「強化すべき点を明確にして科学的トレーニングで追い込んでいく」猛練習ぶりには、やはり驚き、かつ感動しました。各部位強化に専門のトレーナー(スクラム専門、メンタルトレーナーなど)がいるそうで、これにも刺激を受けました。「スポーツの真の醍醐味は練習にあり」というわたしの信念を再確認しました。

10月15日に、この6月から日本ラグビー協会会長を務めている岡村正さん(わたしの大学の同級生です)と食事をしながら話を聞きました。興奮気味で話が止まらない程です。南アフリカ戦とスコットランド戦を観てきたとのことで、例の最後の同点狙いのPGか、スクラムかの場面では「こいつら、何か勘違いしている!?」と瞬間思ったそうで、なんとなく分かる話だなと笑い合ったことです。ともかく感動的な試合でした。

(「練習ハ不可能ヲ可能ニス」という言葉は、元慶応義塾長小泉信三先生の金言だそうです。メルボルンオリンピック代表の原正雄さん(慶応OB)に教わりました)

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ナショナルチームは10月1日から新年度(2016年シーズン)入りです。合宿も始まりました。

新年度スタートに当り、10月2日に崎山利夫強化委員長、大林邦彦ヘッドコーチをはじめとする9名の強化委員会メンバーと2時間半ほどじっくりと話し合いました。

まず2015年シーズンを総括し、ナショナルチームの現状をどうみるか、について現場諸君の意見を聴きました。ついで、新しい2016年シーズンに向けて、何を重点とし、どんな活動をしていくのか、強化委員会の考えを聴いた上で、わたしの考えも率直に話しました。

ここで2016年シーズンの強化委員会方針をご紹介しておきます。ただし、わたしなりの理解に基づき、みなさんに分かりやすいように3点にまとめたものなので、強化委員会の正式の方針ではないことを含んでおいてください。

1.リオ・オリンピック出場枠を確保する。

まず何といってもこれです。8月末のフランスでの世界選手権では獲得できなかったので、残るチャンスはあと1回です。

  1. オリンピックアジア大陸予選(4月23日~.韓国・忠州)
    LM2x 及び LW2x
  2. オリンピック世界最終予選(5月23日~.スイス・ルツェルン)
    LM4-

2.練習量を更に増やし、フィジカル面を強化する。

  1. 練習量をアップしなくては絶対に勝てません。合宿日数を増やします。世界の有力選手は実質プロ化していて、シニアになると勝つために練習量も質もアップするようです。
    合宿日数を増やすとなると、所属団体のご理解が必要です。なにとぞよろしくお願いします。
  2. フィジカル強化に改めて本格的に取り組みます。
    ワールドカップでの戦いぶりを見ると、1,500mまではいい線でいっているのに、ラスト500mで大きく引き離されます。体力負けです。同条件の軽量級でありながら、フィジカル面で大差があるのです。女子では筋力の差も目立つようです。
    ただ、何たることか、この1年間フィジカル測定をやっていないのです。いろいろ事情があったようですが、怠慢です。今年は、正確な測定に基づいて、科学的にフィジカル強化を必ずやります。

3.若手選手の「継続強化」を更に充実する。

  1. 「U-23世代には世界と戦える選手がいる」これは2015年シーズンの実績が如実に示しています。問題は彼らをシニアとして順調に伸ばしていくために今、なにが欠けているのか、です。
    わたしは、ポイントのひとつは、「継続強化選手」として認識した上で受け入れてくれる企業の存在だと考えています。できる限りの努力をしようと思っています。
  2. 若手を強化するためには、もっと世界の強豪と戦う機会を増やすことが大切です。選手自信が、自ら戦う経験のなかで目覚め、自覚することが結局最も大事なのだと思います。
    若いうちから、ヨーロッパに長期間派遣するということになりますが、そのためには所属団体のご協力、そして資金が必要となるわけです。何とかしなくてはなりません。
  3. ジュニア・U-23・シニアと、有望な選手を継続して育てていくシステムがだいぶ機能し出し、道筋もかなり見えてきました。強化委員会の大きな成果だと評価しています。ただ世界的に見るとこれはごく当たり前のシステムで、ボート強国では「10年継続強化」といった息の長い強化システムで育てているようです。わが日本でも、そういう意識での強化システムに磨き上げていくつもりです。

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「2020年東京オリンピック・パラリンピック」に向けて、これからやらなければならない大仕事が3つあります。

第一の大仕事は、上にも述べた「メダルを取るための選手強化」です。これは、強化委員会の仕事であり、まさに「メダル目指してまっしぐら!!」であり、方向ははっきりしています。

第二の大仕事は、「海の森ボートコース」の建設であり、先般、いよいよ入札公募が始まりました。建設会社が決まり、実際の工事が始まったら、しっかりと意志疎通をはかり、なんとしても世界に誇れるボートコースに仕上げなくてはなりません。施設委員会の仕事です。

そして第三の大仕事が、FISAから要請されているいくつかのイベント開催と、オリンピックをスムーズに運営するための人材の確保、養成です。少し具体的に説明しましょう。

まず、FISAから要請されているイベントは3つあります。

2017年2月 FISA臨時総会
2018年11月頃 FISAコーチ会議
2019年7月 世界ジュニア(プレ大会)

また、オリンピック運営のための人材の確保・養成は、まず専門的な大会役員を揃えなければなりません。また必要なボランティアも相当数にのぼるだろうと思われます。

その他にもまだあるかもしれませんが、これは例えば国際委員会にやりなさいといって済むものではなし、何か対策を考えなければならないと思っています。

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以上