公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第35信)

2015年7月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

日本代表クルーの今年の目標は、まず8月末の世界選手権(フランス・エギュベレット)で、来年のリオデジャネイロ・オリンピックの出場権を、軽量級3種目(LM2×、LM4-、LW2×)で獲得することです。各種目とも11位以内に入らなければなりません。

さてそれでは、現在の日本代表クルーの力は、どのあたりにあるのでしょうか。客観的なデータを調べてみました。(選手諸君にはちょっと厳しい点もありますが、現実をしっかり見つめるという意味で書きます。精神的に強くなって下さい)

去年(2014年)の世界選手権(オランダ・アムステルダム)では3種目とも11位には遠くおよびませんでした。

日本クルータイム (優勝クルータイム)
LM2× 20位/24クルー 6:24:63 (6:05:36)
LM4- 15位/16クルー 6:04:38 (5:47:15)
LW2× 20位/20クルー 7:15:10 (6:48:56)

今年の日本代表クルーの今までのところの戦績はどうでしょうか。

まずワールドカップⅡ(イタリア・ヴァレーゼ、6/19~6/21)に参戦しましたが、3種目の結果は次のとおりです。

LM2× 8位/22クルー 6:20:00 (6:09:26)
LM4- 11位/16クルー 6:02:42 (5:57:38)
LW2× 17位/20クルー 7:07:02 (6:53:78)

世界選手権になると各国の意気込みがワールドカップとはだいぶ違ってくるので一概には言えませんが、日本代表は各クルーとも進歩しているようです。

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もうひとつ、ちょっと視点が違いますが、わたしは、まずA決勝(6位以内)に残れるようになることが第一歩だと思っています。

今年のワードカップⅡでは、LM2×、LM4-ともにB決勝(LW2×はC決勝)でしたが、準決勝であと何秒速ければA決勝に行けたのか、調べてみました。準決勝で3位に入ればA決勝に行けたのですが…。

LM2X 4位 6:21:71 (3位アメリカ 6:15:43) (差)6:28
LM4- 6位 6:08:23 (3位中国 5:51:77) 16:46

LM4-の準決勝でのタイムが悪すぎるので、何かあったのかも知れませんが、どの種目ともA決勝に進むためにはもうひと頑張りが必要なようです。

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出張で札幌に出かけた6月18日(木)の昼、中川信治さん(北海道ボート協会副会長)がボート仲間7人(男性5人、女性2人)を集めてくれていて、ラーメンを食べながらボート談義に花を咲かせてきました。北海道では 茨戸 ( ばらと ) を中心としてボート文化がしっかり根付き、人脈も強く繋がっている感じです。愉快な2時間でした。

中川さんの話で印象に残ったことがあります。彼は、ボートだけでなく、リュージュを初め日本のウィンタースポーツに50年近くかかわってきたのですが、「世界で一流になる選手は、ほぼ例外なく英語でのコミュニケーション能力が優れている。世界のトップクラスの選手とフランクに話をして友人になれる。そして何かを盗みとってきて、強くなるのだ」というのです。じつに含蓄のある話で、わがボート界でも特にメダルを目指す若い選手諸君は、ぜひ英会話の勉強に真剣に取り組んで下さい。

食事のあと、東乙比古さん(国際審判員)の案内で療養中のお父様、ボート界の大長老東克彦先生をお見舞いしてきました。

また近くの堀内家を訪ね、堀内寿郎先生(昭和29年北大優勝時の監督)と堀内雄君(わたしの高校・大学の後輩で世界選手権にも出漕した名選手)の仏前にお線香をあげてきました。望外の幸せで、雄君と漕いだ日々をアレコレ思い出したことです。

そしてこの日の圧巻は「東龍太郎メモリアルホール」の訪問です。東龍太郎さん(1964年東京オリンピックの時の都知事で、いうまでもなく日本ボート界の大先達)の遺品の数々を展示しているのですが、なんといっても、若い時から毎日つけてきた日記には圧倒されました。大学ノート100冊以上もあって何冊かパラパラめくってみましたが、ボートの記事もいくつもあって、これはまさに「宝庫」です。数多くのボートの写真とともに、「10日程泊り込んで調べてみてください」と東乙比古さんに言われましたが、ほんとうにできればそうしたいと思うほどです。

帰りに1枚のDVDを借りてきました。昨年(2014年)10月10日にNHKで放映された「発掘‘幻の日記’―よみがえる東京五輪の真実」という番組のDVDです。

敗戦後まだ日の浅いあの時点で、多くのボイコット運動(韓国、台湾、インドネシア、更にドイツなど)もあったらしいのですが、オリンピックを成功させるために全力で戦った東龍太郎さんの姿が、見事に描かれています。

ボート協会の事務局にDVDを置いておきますから、興味のある方はぜひ観てください。

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6月6日(土)、今年の定時社員総会が開かれました。

現在の社員総数は97人で、各都道府県ボート協会の会長さんが47名、そして学識経験者と呼ばれる人(現在の理事・監事と、主に元理事の中から選任された方々)が50名です。社員総会は、民間会社での株主総会に相当するものと考えればよく、日本ボート協会の最高意思決定機関です。

今年も例年どおり、昨年度(平成26年)の事業報告と決算報告、そしていくつかの人事案件が議案として審議され、全て原案どおり決議されました。

ここでは2つの人事案件についてだけ、皆さんにお知らせしておきます。

ひとつは、理事を1名増員しました。原 大(はら たかし)さんで、1975年の早大卒業、漕艇部主将を務めました。三菱東京UFJ銀行で主に広報関係の仕事をされてきたという経歴を活かして、ボート協会の広報の強化にご尽力をお願いしています。現在は双日(株)の副会長です。

もうひとつは顧問の新任です。坂田東一(さかた とういち)さんで、1974年東大修士卒業、1971年には全日本エイトで優勝しています。国際審判員の資格を一時持っていました。文部科学省の事務次官、その後ウクライナ大使という経歴をお持ちで、2020年東京オリンピックに向けて、大局的な見地でご指導いただきたく、顧問への就任をお願いしました。

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6月の国内での協会主催のレースは、12日(金)~14日(日)の第13回全日本ジュニア選手権(熊本県斑蛇口湖)と21日(日)のお台場レガッタでした。

ジュニア選手権には残念ながら行けませんでした。

お台場レガッタは、人の多い都心部で行う超短距離レースというかなり特殊なレガッタです。FISA(世界ボート連盟)では、ボートの普及とPRを兼ねて、各国の首都での短距離レースを奨励していて、日本に対しても「皇居のお堀でレガッタを開けないか?」などと言ってきています。さすがにその提案を受ける勇気はありませんが、お台場レガッタはそういった趣旨のレースなのです。

今年は、小・中学生が16クルーも参加してくれた、あるいは秋田・新潟からも来てくれるなど、ボートに対する関心の広がりには、間違いなく貢献していると思います。

当日は昼頃一時すごい雨になって心配しましたが、ほんのいっときで雨も止んでくれ、皆さん楽しんでくれたようでした。こういう特殊な場所での準備その他は大変だと思います。運営関係者の皆さんには、心より感謝します。

来月のこの「全国のオアズパーソンへの手紙」は海外出張の為、8月5日頃の掲載になります。

以上