日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第33信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(これが正式名称。ここでは「東京五輪」と表記します)に向けて、政界、経済界などの動きが活発になってきました。今回は全体の動きを少しまとめてお知らせしておきましょう。
まず、組織委員会が打ち出している「大会ビジョン」。ほとんどのみなさんは聞いた事もないと思いますので、ここで全文を紹介しておきます。
Tokyo 2020 Vision
スポーツは、世界と未来を変える力がある。
1964年の東京大会は日本を大きく変えた。2020年の東京大会は、
「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、
「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、
「そして、未来につなげよう(未来への継承)」
を3つの基本コンセプトとし、史上最もイノベーティブで、
世界にポジティブな改革をもたらす大会とする。
というものです。
たんなるスポーツ大会に終わらせないで、日本をダイナミックに変革させる機会にしようという、かなり力の入ったビジョンです。これを実現させるために、東京都、政府、経済界、JOC、各競技団体がそれぞれの役割で参画し、連携して東京五輪を成功させようということです。
1.まず組織委員会を中心とした、都、政府、国会などの動きです。
- 競技会場については、全28競技中、18競技が決定しました。ボートも当初の予定通り「海の森水上競技場」で決まったことは先月お知らせした通りです。残りの10競技(水泳、自転車など)は引き続き調整中です。
- 予算についてはよく分かりません。ボートコースの建設予算も不明です。立候補した段階では、総額で約3,000億円ということでしたが、今、見直しが進んでいるところのようです。
- 今年平成27年度のスポーツ関係者予算は290億円で、前年比35億円(約13%)増です。ボートへの配分をぜひ少しでも増やすよう努力してまいります。
- 10月には、念願のスポーツ庁が文部科学省の外局として新設され、スポーツ行政の一本化がなされます。
どなたが初代長官になるのでしょうか。 - 国会では、これまでも「スポーツ議員連盟」がありましたが、もうひとつ「東京五輪推進議員連盟」(麻生太郎会長、橋本聖子、河村達夫のお二人が会長代行、遠藤利明幹事長)ができて、多くの議員が参画し東京五輪への推進支援、財源確保に尽力してくれる体制です。
2.次に経済界の動きです。
- 私事で恐縮ですが、わたしが経団連の評議員会副議長をしていた2013年、経団連の中に、スポーツ振興を図る委員会をつくることを提案し、第一段階として、教育委員会の中に「スポーツ推進部会」を新設することができました。(六大学野球のスラッガーとして有名だったパナソニックの鍛冶舎さんが部会長)そして、2020東京五輪が決まったのを機に、「スポーツ振興委員会」(豊田章男委員長)に昇格し、経団連のスポーツを視る目もずいぶん変わってきたなぁ、と喜んでいます。
- そしてこの3月16日、経済三団体が中心となり、74社が参画して「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」(豊田章男会長)が設立されました。東京五輪への資金面での支援窓口、レガシー形成に向けた経済界としてのサポート等を柱とする活動を目指します。
3.最後にボート界の動きです。
現在、ボート出身の国会議員は7名おられます。これだけそうそうたる議員の皆さんを擁するスポーツは他にないでしょう。その方々とのお話で、近い将来「ボート議員連盟」をつくろうという動きが進んでいます。ボート出身議員のみなさんからは「ボートでメダリストを出すための力になりたい」という熱い思いが届けられています。具体的には、
- ボートの強化、さらにはボート競技の地位向上に向けて、国会議員としてどのような支援ができるか
- 競技力向上のための予算確保への協力をしたい
- 「海の森水上競技場」をレガシーとして、世界レベルのボートコースとするためには何が必要か、東京都とも十分協議・協力していきたい
といった点を中心に検討されています。
まことに心強いことで、われわれとしても誠心誠意手を携え、協力をお願いしていくつもりです。
× × ×
第60回中日本レガッタが開催された東郷町の愛知池の畔に、鎧塚一さんの銅像が建てられ、4月18日(土)その除幕式が行われました。ボート関係者の銅像というのは、多分初めてだと思いますが、わたしも生まれて初めて銅像除幕の綱を引かせてもらいました。それが鎧塚さんという、日本ボート界にとってきわめて貴重で独創的な仕事をされた方の銅像だということに、わたしは大いなる意義を感じています。
鎧塚さんは特に普及に関してたくさんの仕事をされてきましたが、中でもわたしが一番評価し凄いなと思うのは、「全国ボート場所在市町村協議会」の創設です。ボートにとって、いの一番に必要なのは、ボートコースの存在です。現在、全国に60ある公認コースの「所在市町村」の首長並びに議員さんに目をつけたところが、鎧塚さんの凄いところで、つくづく感心してしまいます。
現在のメンバーは30市町村ですが、毎年の「ボートサミット」(市町村長さんの会議)と「市町村レガッタ」には相当数の(毎年半数以上の)首長さん、議会議長さんが出席されます。いちスポーツのために、これだけの首長さんが集まって下さるなど、他のスポーツではありえないことです。しかも全員がボートファン(敢えて言えば鎧塚ファン)になっているのですから驚いてしまいます。市町村レガッタ(今年は9月26日(土)、27日(日)石川県津幡町で開催)をぜひ観戦してください。各市町村議会議員のみなさんが、自民党も共産党も関係なく、揃いのTシャツでナックルフォアを必死で漕いでいる様子を観ると、本当に感動します。
92歳になった鎧塚さんは、挨拶で「わたしは『一隅を照らす』を信条に、ボートの普及、発展を願って仕事をしてきました。それが少しでも認められ、こうして銅像まで建てていただき感謝に耐えません。ありがとうございます」とおっしゃられました。
ほんとうにありがとうございます。いつまでもお元気で日本ボートの発展を見守ってください。
× × ×
4月11日(土)今年の「顧問参与会」が巣鴨の三菱養和会で開かれ42名の方が出席されました。現在日本ボート協会には顧問54名、参与42名がいて、「重要事項について会長の諮問に応ずる」(定款)役割を担ってもらっています。
今年も5項目の重要事項、すなわち
- 強化活動並びにタレント発掘活動について
- 強化募金について
- 2020年東京オリンピックボート競技会場について
- 国際委員会の活動について
- 日本ボート協会「オリンピック選手役員の会」について
この5項目について、理事長並びに各委員長から報告し、それぞれ貴重なご意見ご助言をいただきました。
会議終了後、例年通り簡単な立食懇親会となり、それぞれ顔見知りの面々があちらこちらにかたまって、久しぶりの対話の花を咲かせていました。
以上