日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第30信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
1月4日(日)第10回となる一橋大・東大合同初漕ぎ会に参加。今年も70歳以上の東商混合エイトの2番に座り、戸田コースを1往復。ピッチ18でも結構しんどいのですから、「吾も老いたり」の感です。懇親新年会には70~80名が参集。一橋が「四神」という銘柄の酒を持ってきてくれたので、東大も来年はぜひ「淡青」という酒を捜そうということになりました。両校応援歌を合唱して散会しました。
1月10日(土)恒例の日本ボート協会の新年会を岸体育館のスポーツマンクラブで。各委員会のスタッフが全員前に出て、今年の抱負を述べました。わたしからは「今年2015年は、日本ボート界にとって重要な年。4本部13委員会が、それぞれ1ランク進化しようではありませんか。もちろんどの委員会も大切な仕事を担っているのですが、あえて絞り込むなら今年は、①募金活動②タレント発掘③海の森コース詳細設計④広報活動の4つには特に力を入れてほしい」と話しました。
1月14日(水)NHK主催の「アマチュアスポーツ新春懇親会」が渋谷のNHKで開かれ、60競技ほどの役員が集まりました。スポーツ界のいろいろな人と話をするいいチャンスです。竹田JOC会長、張日本体育協会会長ほか、陸上、水泳、カヌー、スキーなどの役員の方々とアレコレ話しました。最初に挨拶に立った下村博文文部科学大臣は「今年のスポーツ予算は290億円強と大幅アップする。10月には念願のスポーツ庁の発足も固まり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、着々と手を打っていく。70~80個のメダル獲得が目標だ」と、かなり調子の高い話をされました。
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昨年暮、ある会合で前日本商工会議所会頭の岡村正さんと会い、日本ラグビー界のことを、いろいろ教えてもらいました。岡村さんとは大学時代同じクラスでしたが、彼はラグビー、わたしがボートで、教室で会った記憶はほとんどありません。彼は東芝に入社してからもプレーをつづけた本物のラガーです。
「日本のラグビーは強くなったね。トンガ人など外国人を入れたのが効いているのかい」と訊くと「それもある。しかしヘッドコーチのエディ・ジョーンズがいいんだ」ということです。
1月26日NHKテレビの『プロフェッショナル』というドキュメンタリー番組で、そのエディ・ジョーンズさんが取り上げられていました。観た人も多いと思いますが、なかなか興味深い内容でした。
ジョーンズコーチの指導ぶりももちろん参考になりましたが、わたしはむしろ、選手たちの凄い成長ぶりが強く印象に残りました。猛練習で、技術面体力面が強化されるのは当然ですが、それ以上に精神面でたくましく成長していく様子は驚くばかりで、「なるほど、スポーツマンの心の成長とはこういうことなのだ」と感銘を受けました。
ジョーンズコーチの指導はこうです。
「ワールドカップのベスト8が目標」と公言し、「身体の小さな日本人でも絶対に勝てる。そのためには“自らの強みを知り、強みを磨き上げる”これしかない」と言い切ります。「日本の強みは“スピードと連続攻撃”“止められても止められても、挫けず諦めず、10回でも20回でも攻撃を続ける”これがJAPAN WAYだ」というのです。
それを身につけ、日本チームが変身するためには、「世界一タフで苛酷な練習」「肉体戦を恐れずぶつかる気迫」「自分の役割に対する責任感」を選手に強く要求しています。
ジョーンズさんはコーチ3年目ですが、効果は着実にあがっているようで、昨年夏の東欧遠征では、勝ちこそできなかったものの、対等に戦える力をみせ、世界ラグビー界に強い印象を与えたようです。その成長ぶりが最も明瞭にあらわれたのは、対グルジア戦だったようで、試合前の選手ミーティングがテレビに映されていましたが、これが凄い。全員で肩を組み「仲間を信じよう!歴史をつくろう!」というキャプテンの叫びに「オーッ」と応えてグランドにとび出していく選手の顔つきは、わたしには鬼気迫るものに見えました。「戦うとはこういうことか!」と心を揺さぶられました。
最後に「プロフェッショナルとは?」と問われたジョーンズさんの答は「何事も常にしっかり、できるだけ完璧に仕事をする人」というものでした。一見平凡な答ですが、重みのある言葉です。
なおジョーンズさんはオーストラリア国籍ですが、父がオーストラリア人、母は日本人だそうです。
以上