日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第23信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
今みなさんが一番知りたいのは「海の森ボートコースはどうなるのだろう」ということだろうと思います。
6月17日(火)の読売新聞夕刊に「東京都が建設費高騰でオリンピック施設の計画見直しを検討」という大きな記事が出て、その中にボートコースも含まれていると書かれているものですから、わたしのところへも、ボート関係者だけでなくいろんな人から「どうなってます? 大変ですネ」という問い合わせが、大げさにいうと殺到しました。新聞記事だけを見ていると、心配になるのは無理ありませんが、実際のところは、「計画の根本のところ」ではまったくブレていませんから、安心してください。
「計画の根本のところ」というのは、
- 海の森ボートコースでオリンピックは開催する
- 恒久施設として建設し、仮設は最小限にとどめる
という2点で、この2点に関しては、東京都、FISA、日本ボート協会の三者でしっかり確認しています。問題は結局「建設費をできるだけ削減したい」という点に絞られるわけで、わたしたちとしても、根本のところがゆるがない限り、全面的に協力していく考えです。
また恒久施設として高額をかけて作る以上、オリンピック後の活用方針を明確にしてほしいとのことで、これについても、
- このコースをアジアボート界の主要拠点として位置づけ、国際レースを積極的に誘致する
- 日本ボート協会主催の国内主要大会の開催拠点を本コースに移転する
- 艇庫、宿泊施設を、地方のクラブ、大学などに貸与できるようにする
として、具体的な活用計画を提示しています。
日本ボート協会の「海の森ボートコース建設プロジェクト」(山崎佐知夫ヘッド)はこの1月以来、東京都の準備局とひんぱんに打合せを行ってきました。これだけ密接に打合せをしている競技団体は他にありません。5月に入ってから、東京都準備局から「建設費削減について更に検討したい」との申し入れがありました。そこで5月末にFISA施設委員長のスベトラさんに来日してもらい、東京都、FISA、日本ボート協会の三者で詳細な検討を行い、いくつかの費用削減のための修正を行い、基本線の三者確認をしました。
その後、スベトラさんから東京都に対し、FISA主催の国際大会の観戦をかねて確認作業をしたいとの要請があり、7月11日(金)からのスイス・ルツェルンでのワールドカップ第3戦に東京都準備局から何人かの方に出張してもらう予定です。もちろん日本ボート協会も同行します。
これまでの経緯と現況は以上の通りです。これだけの巨大プロジェクトなのだし、まだ計画作定段階なのですから、これからも想定外の問題がいろいろ起きるであろうことは、私も覚悟しています。根本をブレさせないで、国際レベルの諸外国に負けない立派なボートコースをぜひ作りたいと思っています。今後ともみなさんのご理解、ご協力をよろしくお願いいたします。
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6月14日(土)の日本ボート協会の総会で、新しい人事体制が決まりました。わたしは、引き続き会長を続けることとなり、木村新さんにも理事長を続ける事をお願いしました。どうぞよろしくお願いします。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、やるべき仕事がどんどん増えてきているので、理事の人数を3名増やし20名体制にしました。またやるべき仕事の中身も変わってきていて、強化体制の増強は当然として、国際関係、国内での関係諸機関との調整業務などは、ずいぶんハイレベルのものが要求されるようになってきています。
今回の人事はそのあたりをにらんで行ったつもりです。これまで既に理事を務めていた人たちについては、みなさんよくご存知だと思いますので、ここでは、新しく理事に選任された8名の方々を簡単にご紹介しておきます。
- 松元崇さんは、今年の1月まで内閣府の事務次官を務めておられたので、今後重要になる国、東京都、組織委員会などの関係で、大局的な見地での判断、アドバイスをお願いしたいと思っています。
- 加藤直美さんは、語学に堪能でFISAでも「NAOMI」と呼ばれ可愛がられている国際派です。これからますます活躍の場が広がるのは間違いありません。
- 石丸元国さんは、総務委員会のオフィサーとしてこれまでも協会運営にご尽力いただいているベテランです。佐々木峰世さんの後任として、総務委員長をお願いします。
- 千田隆夫さんは、お医者さんですが、早くに国際審判員の資格をとり、今年の4月にはFISAの審判委員に就かれた国際派です。藤居譲太郎さんの後任として国際委員長をお願いします。
- 清水一巳さんは昨年9月にオフィサーの立場で強化委員長に就任され、新しい強化体制の構築に取り組んでこられました。今後は一段上の強化本部長として、他の本部との関係など総合的な視点でのご尽力をお願いします。
- 崎山利夫さんは長年東北大学のヘッドコーチを務め、今年4月にはJOCのナショナルコーチに就任されました。オリンピックでのメダル獲得に向けて、強化委員長をお願いします。
- 村井邦彦さんは、これまでも医科学委員として、世界選手権、オリンピックなどに帯同してくれています。小形滋彦さんの後任として医科学委員長をお願いします。
- 相浦信行さんは、現在協会の事務局長を務めています。今回特に理事に就任いただき、事務局体制の強化並びに関係諸団体との折衡に尽力願います。
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4月に最終メンバーが確定したナショナルチームの動向をいくつかご紹介いたします。
国際レースとしては5月のアジアカップⅠ(戸田)に初参戦し、一応の結果を残しましたが、あまり強い相手ではなかったので割引いて見なければならないかもしれません。いよいよこの7月には欧米の強豪クルーが参加する国際レースに臨みます。
まずシニアクルーは、7月11日(金)からのワールドカップ第3戦(ルツェルン)に、男子4種目(LM4-、LM2-、LM2X、LM1X)女子2種目(LW2X、LW1X)で参戦します。またU23クルーは7月23日(水)からのU23世界選手権(イタリア バレーゼ)に男女ともシニアと同じ種目で参加します。
いい成績を残してくれることを期待するのはもちろんですが、同時に現在の実力を測るための大事な機会です。これまでの強化活動で、何が狙いどおりにいっているのか、そして何が足りないのか、そこのところを冷静に客観的に見きわめてきてください。次なる強化にしっかり継なげることが大事な勝負どころだと思います。
8月の世界選手権(アムステルダム)、9月のアジア大会(忠州)に向けた大事なステップです。
ところで6月のワールドカップ第2戦(フランス エギュベレット)の結果を見て驚いたのは、中国クルーが一段と強くなっていることです。ほとんどの種目で決勝進出していますし、問題の軽量級種目でも、LM1Xで優勝、LM4-は6位、LW1Xが3位、LW2Xで6位というすばらしい成績です。
わたしは、かねがねまずアジアで中国クルーに勝つことが目標だと思っていましたが、考えていた以上の強敵だな、というのが率直な思いです。
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「第5回お台場レガッタ」(6月29日)も徐々に人気が高まり、参加希望者が多く、クジ引きで選ばれた128クルー800人強が参加して、たいへんな賑わいでした。
今年の話題は、F.W.ストレンジ師の曽孫さんから寄贈された「ストレンジ杯」です。大層由緒あるもので、ストレンジさんが来日する(1875年)前にロンドンで入っていたボートクラブが優勝者に贈った「グローブ・パーク漕艇クラブ 1874年スクラッチエイト優勝杯」という、いわば骨董品です。牛の角で作られ、銀の縁取りがされています。
参加クルーの頂点に立って、来日していたストレンジ師の曽孫夫妻から「ストレンジ杯」を受け取ったのは、「稲門超六漕ごう会」でした。平均年令71.6歳、年の功(?)の優勝おめでとうございます。
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わたしは残念ながら行けなかったのですが、6月6日(金)からの全日本ジュニア選手権(熊本県 班蛇口)には、今年も全国各地から男女78人、合計156人のスカラーが集い、今年のジュニアチャンピオンを競いました。男子は古田直樹君(米子工業高)、女子は高島美晴さん(米子東高)が優勝し、奇しくも米子勢が男女ともチャンピオンとなりました。おめでとうございます。
この大会は同時に「2014年世界ジュニアボート選手権大会」(8月6日からハンブルグ)へ派遣する日本代表を決めるレースも兼ねていて、男女各6名、合計12名の派遣選手を内定しました。ボート選手として最初に戦う世界大会だと思いますが、全力を挙げて戦ってきてください。学ぶことは多いと思います。
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最後にお詫びと訂正です。
先月、岸記念体育館についての文章のなかで、明治大学監督の角久仁夫さんを島根県出身と誤って書いてしまいました。この場を借りてお詫び申し上げます。正しくは、角さんは鳥取県米子市出身です。以前一緒にお酒を飲んだ時に、米子の話をずいぶん聞かされていたのですが……。今年2人の米子出身のジュニアチャンピオンが生まれたことに免じて(関係ないか?)勘弁してください。
以上