公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第22信)

2014年6月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

5月16日(金)から3日間、「第36回全日本軽量級選手権大会」が戸田コースで開かれ、男子6種目、女子3種目の今年の軽量級チャンピオンが決定しました。スリリングなレースが多くて、観ていてなかなかおもしろい大会でした。

「軽量級」種目は1974(昭和49)年に初めて世界選手権に導入され、現在では男子6種目(LM1X、LM2-、LM2X、LM4-、LM4X、LM8+)女子3種目(LW1X、LW2X、LW4X)が取り入れられています。

一方、オリンピックへの導入はなかなか進みませんでしたが、日本を中心とするアジア各国の働きかけにより、1996(平成8)年のアトランタ大会から軽量級3種目(LM4-、LM2X、LW2X)が取り入れられて、今日にいたっているわけです。

そして、わが日本ナショナルクルーとしては、まずこの軽量級でのメダルをねらう、というのを基本戦略にしていることは、ごぞんじのとおりです。

今回アジアカップでのコーチセミナーの講師として来日したロン・バットさん(オーストラリアのナショナルコーチ)といろいろ話をしましたが、彼は「これだけ大規模な軽量級だけの大会をひらいている国は、世界中ほかにはない」と驚いていました。「600人も参加するとは……。これだけの人的資源があれば、いつかきっと世界で勝てる」と力をこめて鼓舞してくれました。「外部からみるとそう見えるんだ」と新鮮に聞きました。

なお4月に決定したナショナルクルーのうち、LM2-とLM4-の2クルーがオープンという立場で決勝レースに参戦しました。同時開催のアジアカップにない種目なので、特別にオープン参加をみとめたわけです。

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5月16日(金)から3日間、全日本軽量級選手権と併催のかたちで、「アジアカップⅠ」を戸田コースで開催しました。11カ国、200人強の選手役員団をむかえて、小なりとはいえ2005年の長良川世界選手権以来の日本で開かれる国際レースなわけで、戸田は賑わいました。

「アジアカップ」といっても、みなさんなじみがないと思いますので、簡単に紹介しておきましょう。

アジア地域でのボートの普及・強化を目的として、2011年に新設されたレガッタです。ARF(アジアボート連盟)が主催し、第1回はシンガポールで行われ、今回は第3回になります。まだ誕生ホヤホヤの大会で、前回の参加国はたったの6カ国、日本も今回が初めての参加です。アジアのボート強国の中国はまだ一度も参加していません。

アジアのボートの現状を知るために、すこし詳しく今回の結果をみておきましょう。

種目は男子3種目(LM1X、LM2X、M4X)女子3種目(LW1X、LW2X、W4X)の計6種目です。メダル(計18個)の獲得数を国別にみると

日本 6(うち金3)
イラン
ベトナム 2(うち金1)
香港 2(うち金1)
台湾
カザフスタン 1(うち金1)
インドネシア
韓国

(フィリピン、シンガポール、タイは 0)

日本は4月に決まったナショナルクルーを各種目に「JAPAN1」として参戦させ、同時にせっかく日本開催のチャンスですので経験をつむために、「JAPAN2」として社会人から、「JAPAN3」として学生から出漕希望者を公募し、強化委員会が規準にもとづいて選定し出漕させました。

結果をみると、軽量級についてはこのレベルの大会では勝てることがわかりましたが、オープンウエイトになると、M4Xでは5位(優勝カザフスタンとのタイム差9秒38)、W4Xも5位(優勝ベトナムとのタイム差11秒38)という結果でした。アジア各国はまだ弱いとはいえ、ヨーロッパなどからプロコーチを招き、着々と実力をつけてきています。特にベトナム、イランはすばらしい漕ぎで、目をみはるほどです。

ARFが主催している大会は、ほかにもいくつかあります。ただARFとしてアジアボートの目標をどこにおいて活動していくべきか、これから十分検討していきたいと思っています。

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5月24日(土)から2日間、「第7回全日本マスターズレガッタ」を群馬県館林市の城沼ボートコースで開催しました。大きな公園のなかにある実に美しいコースで、「まるでヨーロッパのコースのようだ」というのが多くの艇友たちの印象でした。つつじの花が全国的に有名で、シーズンにはたいへんな人出だそうです。安楽岡市長さん(群馬県ボート協会長も兼ねる)が2日間とも観戦してくださったのも、嬉しかったです。

今年も1200名ちかくのOB,OGたちが集まり大賑わい、みんなかつての好敵手とのレースを楽しんでいました。「世界マスターズ」をねらうクルーもいくつかあり、このレガッタは完全に定着したようです。

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日本ボート協会も入居している原宿の「岸記念体育会館」が、2020年の東京オリンピックを機に神宮のほうに移転する計画が進んでいます。その際「岸記念」という名称がはずされる可能性もあるということで、いま有志で存続運動を進めています。

ボート関係者でも知らないひとが多いようですが、「岸」というのは「岸清一」氏のことで、日本ボート協会の初代会長なのです。同時に日本体育協会の二代目会長(初代会長は講道館柔道の嘉納治五郎氏)も務め、なんと3回のオリンピック(第8回パリ、第9回アムステルダム、第10回ロサンゼルス)の団長でもありました。ボートはもちろん、日本スポーツ界の恩人です。

その岸さんが1937年に急逝され、その遺産でお茶の水駅近くに「岸記念体育会館」が建てられたのですが、1964年の東京オリンピックを機に現在の原宿に移築されたわけです。岸さんは島根県松江市のご出身なので、島根県出身のかた(ボートでは明治大学監督の角久仁夫さんなど)が中心になって存続運動をはじめたのです。

ぜひ心にとめておいてください。

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この本が面白いので紹介しておきます。

岡崎慎司 「鈍足バンザイ !」  (幻冬舎)

サッカー日本代表の岡崎選手が書いた(語った)本です。

わたしはサッカーに関してはあまり詳しくないし、またボートとサッカーはいろんな面で違いの目立つスポーツだと思いますが、薦められて読んでみたら読みやすくて面白いし、「なるほど!」と参考になる点もたくさんあったので、特に選手のみなさんにお薦めでします。

「足が遅い。背も低い。テクニックもない。人気もない。そして、アタマもあまり良くない」と自覚している岡崎選手が、どうして日本代表にまでのぼりつめることが出来たのか、また世界最高峰のひとつブンデスリーガで戦うことができるのか。その成長のプロセスが率直に、偉ぶらないで、しかも具体的に語られているところが、わたしには非常に面白く読めました。

間もなくブラジルでのワールドカップが始まりますが、背番号9の岡崎選手がどんな活躍をしてくれるか、この本を読んだだけに、興味津津です。

以上