日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第21信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
「ボートレース(競漕)」は俳句の季語になっています。歳時記をひくと「明治以来“オール持つ手に花が散る”とうたわれ、桜の盛りのころの季感を持っている」とあり春の季語なのです。例句として「競漕の赤ばかり勝つ日なりけり 原石鼎」というのが載っていて、おもわずギョツとしました。この赤はまさかブレードの色のことではないと思うのですが……。
本格的なボートシーズン到来で、伝統の対校戦などが4月は目白押しでした。対校戦は一生記憶にのこるレースになりますので、選手はもちろんOB・OGのみなさんも熱くなってレースをむかえたことでしょう。
3月29日~31日に福井県美浜町の久々子湖コースで、第9回全国中学校選抜ボート大会が開かれました。わたしは今年に限って残念ながら行けなかったのですが、非常に大事な大会だと思っています。全国各ブロックから選抜された、男女各48人計96名の参加です。選抜は、原則としてマシンローイングのタイムで選ばれてきています。その成績をみせてもらいましたが、驚いたのは今回のレース結果がマシンローイングの持ちタイムとほとんど一致していたことです。いまさら驚くことではなく、当然なのかもしれませんが……。
これからも分かるように、基本となる身体能力をまず強化することが大切です。その意味もあって今年も「ジュニア選手身体づくり、トレーニング講習会」が開かれ、選手・地元の中学生・父兄の方など約100名の人たちが参加してくれました。強化委員会、医科学委員会の3人の講師の実技をふくめた実践的な話を、皆さん実に熱心に聴いてくれたようです。
この講習会は全国各地でこれからも順次開催していく予定です。世界のトップレベルと比べると日本選手は基礎体力がおおきく劣っていて、あと10パーセント近くは伸ばさないと勝てないと思われます。そのために、中学時代から計画的・継続的に強化することが大事だと強化委員会・医科学委員会では考え、この取組みを進めているのです。各中学校でぜひこのトレーニングを取り入れていただきたいと思います。
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2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、やらなければならないことが少しずつ広がってきています。おおきく次の4つです。
1、選手強化
2、海の森ボートコース建設
3、国際関係
4、強化募金
最初の2つについては何度も話してきたので今回は省略します。それでまず「国際関係」についてですが、いま進めているのは次の3つです。
まず国際大会の日本への積極的誘致をしています。その第1弾が今月16日から戸田で行う「アジアカップI」です。14ヵ国(含日本)205人(含役員)の参加予定で、思った以上に大きな大会になります。ぜひ観戦・応援にきてください。そして来年以降も毎年アジア選手権、世界マスターズレガッタなどの国際レースを招致する予定で、2019年にはプレオリンピックとして新しいコースで「世界ジュニア選手権」を開催することになります。
次にFISAへの委員派遣を増やそうと考えています。今般千田隆夫さん(審判委員会オフィサー)がFISA審判委員に就任することが決まり、これで日浦幹夫さん(医科学委員会オフィサー)のFISA医事委員、細渕雅邦さん(総務委員会オフィサー)のFISAイベント委員とともに3人がFISA委員に就任し、FISAとの連携が緊密になるのはまちがいありません。3人のみなさんはもちろんこれまでの活躍がFISAにも高く評価され任命されたわけで、大変だとは思いますが、おおいにがんばってくださるようお願いします。
そして最後にARF(アジアボート協会)の次期会長国に立候補することにしました。これまで日本は1995~1998年久米豊さんが第4代会長を務めました。その後、日本は会長に就いていないのですが、今年10月で現会長(韓国のLEEさん)の任期が終了するにともない、日本が後をやってほしいと強く要請されたので、引き受けるタイミングかなと考えたわけです。任期は4年です。
次に「強化募金」の件です。日本ボート協会は通常の年間予算は2億円強という、他の競技団体と比べてもかなり少ない予算で運営しています。今後はJOC、JSC等の助成金も増えるでしょうし、獲得に最大限の努力はもちろんするつもりです。しかし悲願のメダル獲得に向けて更なる強化活動を推進していくためには、どうしても資金が足りません。日本代表候補選手たちの自己負担がそうとうの額になっていることも、ご理解いただきたいと思います。
今後6年間の強化計画に基づき試算してみますと、毎年あと70~80百万円を増額する必要があります。このギャップを埋めるために、広く強化募金をお願いしたいと考えています。
目標額は今年から6年間で5億円とし、募金対象としては各企業にお願いするほか、ボート関係の個人の方々にも高校・大学ボート部のOB会などを通じて広くお願いしようと考えています。どうぞ趣旨をご理解・ご賛同いただき、格別のご協力をお願いいたします。
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トピックスをいくつか紹介しておきます。
- オリンピックには開催国枠があって、全種目参加できると考えていませんか。まったくの誤解で、開催国枠は廃止されました。オリンピックが大きくなりすぎたので競技種目ごとに参加人数枠が抑えられ、その結果ボートでは開催国枠が廃止されたのです。したがって出るためには、従来通り世界選手権か大陸予選で勝って「参加資格」を獲得しなければならないのです。自国開催なのに出られないなどとなったら大変ですね。もちろんあってはならないことですが……。
- 4月上旬、IOCのジョン・コーツ副会長が、2020年東京オリンピック・パラリンピックの調整委員長として来日しました。コーツさんはオーストラリアのボート出身です。その関係で今回の会場視察の際、ボートの榊原春奈選手(ロンドンオリンピックスカール代表)が案内役を務めました。
- オリンピックの事前キャンプをはる国は多いと思いますが、その招致活動が少しずつ始まっています。わたしのところへも、長良川国際レガッタコースへの誘致委員会(海津市、桑名市、愛西市)の3市長さんが誘致要望書をお持ちになりましたし、また滋賀県知事と滋賀県ボート協会会長がご一緒においでになり「事前キャンプを視野にいれつつ、琵琶湖漕艇場の施設とコースの整備を検討している。よろしく支援をお願いしたい。」というお話でした。各地のボート施設がこれを機に整備されることとなれば、まことにありがたいことで、各県の会長さん理事長さんを中心に、よろしく目配り・ご検討お願いします。
- 当協会の理事(前副会長)の田口義嘉寿さんが、このたび岐阜県名誉県民になられました。17年ぶり7人目の名誉県民とのことで、岐阜県を代表する経済人として県の発展に寄与されたことはもちろんですが、やはりボートマン・スポーツマンとして、2005年の世界ボート選手権大会、2013年のぎふ国体での献身的な貢献が高く評価されたものということです。4月10日の「祝う会」でのご挨拶でも、ご自身その思い出が一番だと話されていました。
ボート仲間として心からおめでとうと申し上げます。
以上