公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第12信)

2013年8月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

皆さんには多分なじみの薄い(見た人も少ない)であろう2つのレガッタをご紹介します。

4回目の開催になる「お台場レガッタ」が6月30日(日)に、お台場海浜公園特設コース(300メートル)で開かれました。青森、秋田など遠方から参加のクルー、初めて漕ぐ小学生の2クルーなど全部で130クルーの参加を得て、この新しい試みもようやく定着してきたかな、との感じです。

このレガッタは、日本ボート協会主催のものとしては、ちょっと特殊なものです。「人の集まりやすい都心部のごく短いコースで、未経験者からベテランまで多様な人が楽しめるレガッタ」というのがコンセプトです。なにしろレース距離が300メートルと短いですし、未経験者だけのレース(エンジョイ・レース)とか男女ミックスのレースなどもあって、とにかくみなさん楽しそうです。

世界ボート連盟(FISA)もこうした普及活動には大賛成で、「思い切って皇居のお堀でやれないか?」と突っ込まれていますが、宮内庁を説得するのはさすがにちょっと自信がありません。

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もうひとつの第33回「全日本中学選手権競漕大会」は7月20日(土)21日(日)長良川国際レガッタコースで開かれました。ここ長良川での開催は5回目ですが、今年も全国35の中学校(及びボートクラブ)から204クルー、約530名の参加です。

全国の中学生が一緒に集まってレースできるのは、3月の福井県美浜町での全国中学校選抜ボート大会とこの大会の2つです。両方ともに参加している選手が多いようですが、じつにしっかりした漕ぎの選手が多くなったと、わたしは感心しています。必ずや将来の日本代表選手がこの中から生まれるにちがいありません。

ただ、ボート部をもつ中学校の数は増えていないようです。100名以上の部員をもつ滋賀県瀬田北中学校などは別格としても、20~30名規模の部員を抱えるいわゆるボート名門中学校は、残念ながら固定してきているようです。

一方で熱心な指導者に恵まれ、ほんの数名の選手で頑張っているボートクラブが、このところずいぶん増えてきました。今大会でも総合で男子が優勝、女子が3位になった神戸ボートクラブなどが称賛を浴びていましたが、他の小さなクラブも大健闘していて、強く印象に残りました。

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上記の神戸ボートクラブがどんな組織で、どんな活動をしているのか、監督の古米(ふるまい)一雅さん(日大ボート部OB)に話を聞いたのでご紹介しておきましょう。

まず兵庫運河・浜山レガッタコースが出来た経緯ですが、そもそも運河・貯木場として開発され、その後、時代の流れで使われなくなった運河をどう再利用するか、区役所が街おこしの一環として(アイデア募集に基づき)レガッタコースとしたものだそうです。レースコースは250メートルと短いのですが、練習用にはほぼ直線の800メートルが使えるそうです。そして艇庫はもちろん、ナックル艇5杯、クォドルプル5杯、エルゴメーター20台などを区が揃えてくれて、6年前から活動を始めたということです。

問題の指導・練習ですが、古米さんが父兄やボランティアの方たちの手を借りながら、じつに熱心に指導しているようです。練習内容を聞くと、中学生にしてはかなりのスパルタなので驚くとともに、やはり勝つためにはこれぐらい練習するんだな、と納得しました。

火・水・木曜日は4時半集合、水上練習のほかに、ランニング(2~5キロ)、エルゴ、腹筋・背筋(400回)、金曜日は自主トレ、土・日曜日は朝6時から水上練習で800メートルを10往復(16キロ)ほど。月曜日は休みです。この練習量は相当なものだと思います。特に最近はどこのクルーも敬遠しているランニングを、古米さんは重視しているとのことで、わたしは非常に興味を持ちました。

現在部員は6人(男子3人女子3人)、全員別々の中学校だとのこと。最初のころは全く関心を示さなかった学校側も、毎年教育委員会表彰などを受け続けたので、ようやく認識してくれるようになってきたそうです。あとは中学卒業後、近くにボート部を持つ高校がないので「ボート留学をさせるしか方法がないのが、悩みです」と古米監督はため息をついていました。

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7月は大きな世界大会が3つ続きました。取り急ぎ最終結果をお知らせしておきます。

ユニバーシアードのLM4-で銅メダル、U-23のLW1×で同じく銅メダルを取ってくれたのは、嬉しいニュースでした。選手たちの帰国を待って、強化本部としてしっかりと検討会・反省会を行い、今後に繋がる対策を考えていくつもりです。

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1、第27回ユニバーシアード競技大会

(ロシア・カザン 7月6日~17日)

・LM4-(小林雅人、坂上熙英、佐藤祐介、荒木祐作)

3位【銅メダル】 6’50”83
優勝 ドイツ 6’46”41
2位 フランス 6’49”17

・LM2×(宮崎真次、大塚圭宏)

8位 6’55”50
優勝 オーストリア 6’40”37

・LW2×(中川ひかり、大石綾美)

5位 8’10”31
優勝 ベラルーシ 7’49”83

2、ワールドカップ第3戦

(スイス・ルツェルン 7月12日~14日)

・LM4-(片岡勇、中野紘志、佐藤芳則、須田貴浩)

14位 6’11”90
優勝 ニュージーランド 5’53”52

・LM2-(光岡紘輔、遠藤光)

12位 6’54”99
優勝 イギリス 6’34”58

・LM2×(浜田祐太、池田祐紀)

10位 6’33”54
優勝 フランス 6’13”54

・LM1×(塚本章良)

21位 7’29”14
優勝 ポーランド 6’53”09

・LW2×(福本温子、若井江利)

13位 7’27”94
優勝 イタリア 6’52”41

・LW1×(末廣あすみ)

12位 8’05”73
優勝 ブラジル 7’34”33

3、U-23世界選手権

(オーストリア・リンツ 7月24日~28日)

・M1×(外崎海舟)

23位 7’27”57
優勝 チェコ 7’12”90

・LM1×(大塚圭宏)

16位 7’19”02
優勝 チリ 7’16”22

・LW1×(大石綾美)

3位【銅メダル】 8’06”68
優勝 ギリシャ 7’58”12
2位 ベラルーシ 8’02”79

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東京オリンピックが来るのかどうか、運命の9月7日が近づいてきました。先日、麻生副総理とお食事をする機会があったので「ローザンヌでのプレゼンテーション、ご苦労さまでした。可能性はどうみますか?」とお聞きしたところ「正直、まったくわからない。なにしろ公職選挙法のない世界だから、どんなどんでん返しがあるやら……。ヨーロッパ人が中心の選挙だから、基本的にはヨーロッパが強いと考えておいたほうがいいだろう。日本が勝つとしたら、たぶん”敵失”に恵まれたときかな……(笑)」とのご託宣でした。

幸いというかなんというか、”敵失”がいくつか目立っているようではありますが……。

朗報を待ちたいと思います。

以上