公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

日本ボート協会JARA

全国のオアズパーソンへの手紙(第10信)

2013年6月1日
日本ボート協会会長
大久保 尚武
会長写真

今年(平成25年)の第1回日本ボート協会定例理事会が5月24日(金)に開かれました。 そこで、みなさんにもぜひ知っておいてもらいたい案件が2つ討議されましたのでご紹介しておきます。

  • 「新生日本ボート協会ビジョン」について
  • 「黒部川(小見川ボート場)事故調査レポート」について

この2件です。

まず「新生日本ボート協会ビジョン」ですが、これは昨年6月の新「公益法人」への移行を機に、 新たな日本ボート協会として進むべき方向を示すビジョンを打ち出そうと考え、検討を始めたものです。 特に2020年が日本ボート協会創立100周年にあたりますので、当面そのあたりをターゲットにして、 これまでの歴史の中で培われた伝統を継承しつつ、新たな日本のボート界がめざす姿と活動のありようを、 できるだけ明快に示すビジョンとしたいと考えました。内容は基本的に次の3部立てとします。

1、基本理念
組織としてあるべき魂・信念を示します
2、ビジョン
ボート関係者全体でめざす未来の方向を簡潔に示します
3、行動指針
取り組むべき活動を6つにまとめ、具体的な行動の指針を示します

このビジョンは、6月15日(土)の総会で正式発表されます。

中学生からシニアのみなさんまで、すべてのボート関係者がこのビジョンを心にとめ、それに沿った活動をすることを願っています。

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次に「黒部川(小見川ボート場)事故調査レポート」です。 昨年(2012年)12月26日、千葉県・黒部川(小見川ボート場)で、 高校生(シングルスカル34艇)が合宿・乗艇中に天候が悪化し、16艇が転覆した事故については、 みなさんも記憶にまだ新しいと思います。その事故状況を詳しく調査してきた安全環境委員会のレポート(第1報)が報告されました。 じつに丁寧で詳しい検証内容で、わたしも読んでたいそう勉強になりました。 ぜひ全てのボート関係者の方(特に指導者のみなさん)に読んでほしいと思いますが、 ここではわたしが特に「その通り」と納得した3点についてご紹介しておきます。

1、選手の安全教育・訓練について
一般的な安全講習を受けておくことはもちろんのこととして、このレポートでとくに強調しているのは、 「すべてのシングルスカル選手は、早期に沈の回復訓練(少なくとも沈の体験)をしておくべきである」という点です。 「回復技術そのものの習得というよりも、転覆・落水を体験しておくことがいざというとき、 冷静な行動をするための基礎になる」という指摘は、じつに納得性(説得力)があります。
中学生がまずシングルスカルからボートをスタートするという現状を考えると、 この訓練は必須科目としてぜひ実行してほしいと思いました。
2、風・波の悪化状況と出艇判断について
気象データなどを分析した結果、「出艇時の風・波の状況は、中止を考えるような状況ではなく、 出艇(練習開始)の判断には問題はなかったと考えられる。」としています。 そして「風・波はタイムトライアルの進行とともに、徐々に(約30分の間に)悪化していったと考えられ、 少なくとも、全く良好なコンディションから、一気に極端な突風が吹いた状況ではないと推定される。」と分析しています。
そしてここからが大事な指摘です。「ここで、コンディションが段階的に悪化したか、 急激な突風だったかの議論はそれほど重要ではない。 ローイングでは練習中に漕行困難となるような天候の急変や沈が「発生し得るもの」として扱うべきだからである。 そして実際に天候が悪化した場合にも、適切に自力退避したり、または救助を展開したりして、 的確に対応できる体制を構築することに重点をおきたい。」
この考え方は非常に重要なので、ぜひその方向で体制整備を進めたいと思います。
3、低水温時の人命最優先の救助について
「救助にあたっては、救助艇も陸上の指導者も、艇の破損・残置を気にせず、 人命救助を最優先した。(そのために、翌日まで4艇が水上に放置された)」 「早くから人命最優先で行動し、艇の回収を後回しにしたことが、 人的被害を最小限にした理由の重要なひとつであると確信できる。もし艇の回収をしていたら、 救助速度は極端に低下し、重大な事態に陥っていたと容易に推察できる。この部分での指導者の行動は評価に値する。」
こうした評価のバックには次のような事実があるのです。「やむをえず水に浸かった者は21名いた。 そのうち14名がほぼ5分以内、4名が5~10分、2名が10~20分で、それぞれ水から脱出することができた。」 「もしさらに5分程度でも救助(または水からの脱出)が遅れていたら、事態は深刻になった可能性がある。 (水温と推定限界時間の試算から)」ということなのです。
幸い今回は深刻な低体温症になった選手はいませんでした。関係者の的確な対応には、ほんとうに心から感謝します。

以上がわたしの受けた教訓と感想です。ぜひ読んでみることをお勧めします。

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5月13日(月)日本ボート協会としては初めての試みでしたが、 マスコミ記者のみなさんを対象にした方針説明会を開き、引き続き岸体育館内のスポーツマンクラブで懇親会を催しました。 じつはどれくらい集まってくれるか、ちょっと心配したのですが、予想以上に来てくれて、まあ成功だったと思います。

テレビはNHKとテレビ東京、通信社は共同と時事、新聞社は朝日・読売・毎日・産経、 以上全部で8社、15名の記者さんの参加です。わたしは恥ずかしながら全員初対面の方ばかり。 協会側は木村理事長はじめ15名が出席して対応しました。

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最初の挨拶でわたしから「全国のボート関係者は、ボート競技についてマスコミがもっと取り上げてくれることを、 強く願っている。そのためには、まずわれわれの方から積極的に情報発信するつもりなので、よろしく。」という点と、 「日本ボート協会創立100周年の2020年のオリンピックまでには、 必ずメダルを取れるよう強化するので、見守ってほしい」という2点を話しました

次に古城広報委員(江戸川大学准教授)による「ボート競技近代史」の講演。 「こんなに古い伝統ある競技なのですねぇ。」とか「皇族がこんなに漕いでおられるんですね。 イギリス発祥のスポーツだからでしょうね。」といった声が聞かれました。

最後に相良強化委員長から「クルージャパン 日本代表チームの取組み」について細かく説明しました。 今年の国際レースの予定、日本代表選手の紹介、将来のオリンピックを目指すべき有望選手の発掘と育成策、 などを紹介しました。記者のみなさんからは、 「別の競技の経験者からボート競技への“競技転向選手”(トライアウト)の発掘計画はありますか」 などいくつかの質問がありました。

終了後の懇親会には、全員が残ってくれて、おおいに話が弾み、大盛況でした。 ボートレースを実際に見たことのある人は、多分1~2名しかいなかったと思いますが、 「一度見てみようかな」と思った記者さんが何名か増えたのではないでしょうか。 もちろんそんなに甘くはないと思いますが、今後のワーク次第だと思います。 「継続は力なり」を信じて努力すれば、戸田に来てくれる記者さんは必ず増える、そんな感触を得ました。

以上