日本ボート協会JARA
全国のオアズパーソンへの手紙(第3信)
日本ボート協会会長
大久保 尚武
北海道の東乙比古さん(日本ボート協会A級審判・FISA国際審判員)がロンドンオリンピックのボート審判に選ばれ、 審判としてオリンピックに参加するという貴重な経験をしてきました。 全部で20人のオリンピック審判員の一人に選ばれたわけで、名誉なことだし嬉しいかぎりです。 報告書を読んで面白かったところをすこし紹介します。
運営が結構フレキシブルなことに東さんも驚いたようで、 例えば主審艇のカタマランのフロントデッキにカメラマンの席があって全レースを撮影・中継するのだそうです。 日本では考えられないことで、審判長として「認められない」と降ろそうとしても「FISAの指示だ」との一言。 コースの上には空中カメラがぶらさがりレースと一緒に走って撮影し、超大型スクリーンに映し出す。 つまり「観客に親切で、ボート普及に役立つ取り組みは“公平公正”を損なわない限り実行する」 というFISAの方針が徹底しているのだと東さんは解釈しています。
日本のわれわれも宝くじ基金の支援で映像システムを購入し、 全日本やインカレの時に観客席の前にスクリーンを置き、スタートからの様子を観ることができるよう準備を進めています。 しかしまだ撮影の体制・技術が整っていないせいか、満足すべき映像とはいえません。 早く良い画面でレースのスタートからゴールまでの全貌が観客席で観られるようにしたいと思っています。
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10月5日(金)~8日(月)「ぎふ清流国体」が川辺漕艇場で開かれました。 台風が近づいていたので心配しましたが、当日は絶好のコンデションに恵まれホッとしました。 国体にはやはり独特の雰囲気があります。土産物店や地元名産品店などもたくさん並び、 観客もたくさん来てくれて賑やかです。 5日の午後には常陸宮殿下同妃殿下がお成りになり、 予選4レースをご覧いただきました。 勝ったクルーが目の前を通ると妃殿下が率先して拍手をされ「おめでとう!」と声をかけられたので、 選手もすごく嬉しそうでした。
5日の夜は「都道府県連絡協議会」が開かれました。 各都道府県ボート協会と日本ボート協会とのコミュニケーションの場として年に1回、 国体の時に開催される大事な会議です。 ボートの普及についてはもちろんですが、 地域での若い選手の育成・強化にこれから一層力を入れてもらわなければならないので、 日本ボート協会の方針・方策をきちっとお伝えし、考え方を共有化していかなければならないのです。
なおこの席上、本年度の有功者表彰として青森県ボート協会前会長の工藤幸七郎さんを表彰しました。 高等学校ボートの強化にも貢献いただいた方で、本当におめでとうございます。
皆さんあまりご存じないかと思いますが、 都道府県での普及・強化とも密接に関連することなので、 「全国ボート場所在市町村協議会」について少しご紹介しておきます。 この会は大先輩の鎧塚一さん(元日漕理事・普及部長)が25年前に創設し、 その後執念をもって育ててこられた会で、現在加盟市町村は全国で29市町村を数えるまでになりました。 ボート場を持ち、市民レガッタなどを毎年開催してくれている市町村の首長さん、 議員さんとがっちり手を組み、ボートの味方になってもらうことがボートの普及にとって一番大事だ、 と鎧塚さんは考えたのでしょう。その具体的な活動が3つあり、これが実にユニークなのです。
- 1.ボートサミット
- 会員市町村の首長さんの集まり。第25回目のボートサミットが7月に愛知県高浜市で開催されました。
- 2.全国市町村交流レガッタ
- 第21回大会を9月に兵庫県豊岡市の円山川城崎漕艇場で開催。 今年は全部で110クルーが参加しましたが、議会議員の対抗戦というユニークなレースがあり、 これに17クルーが参加、議員先生方はそろいの派手なユニフォームを着て張り切っていました。
- 3.議長懇話会
- 各市町村議会の議長さんの集まり。第8回の会議がレガッタ当日豊岡市で開かれ、 なんと19名の議長さん(一人だけ副議長さんが代理)が自ら出席し、 自分の町のボート大会の様子などをそれぞれ発表してくれました。
現在この全国ボート場所在市町村協議会の会長は、長野県下諏訪町長の青木悟さんです。 学生時代ご自分もボートを漕いでいた青木さんは、ボートについてのご理解が実に深くて、 われわれの大切なパートナーです。今後ともがっちり手を握っていくつもりです
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2020年のオリンピックに東京都が立候補しており、 来年9月のIOC総会で開催地が決定することになります。 正式のプロポーザル(施設等の計画提案書)は来年1月に出すのですが、 われわれのボート会場のプランについては、東京都招致委員会、IOC、FISAなどとの細かな詰めがほぼ終わったところです。 前回2016年にむけて立候補した時のプランと概略同じなのですが、 できるだけお金をかけるなということで、回漕コースをあらたに掘ることなどは取り止めました。 現時点でのプランをかいつまんでご紹介します。
場所は東京湾の人工島2つにはさまれた「海の森コース(Sea Forest Waterway)」です。 幅200m、長さ3000mの水路の両端を閉じて潮の干満の影響を受けないようにし、 8レーンのレースコースを設けます。回漕コースは波の影響を与えないように境に防波ブイをおいて幅50mの水面をつかいます。
施設は必ず将来とも使えるものとすること、というのがIOCの基本方針なので、艇庫などの陸上施設も将来各クラブ、 大学などが払下げを受けて使うことなども想定して、各方面と十分詰めていきたいと思っています。
交通の便はバスになります。ゆりかもめのテレコムセンター駅、 りんかい線の東京テレポート駅から約20分とのこと。先日周辺をグルっと見てきましたが、 やはりボートにとって心配なのは風です。そう強くはないとのことですが、 風向きはほとんどが海からの南風(つまり横風)だそうで、戸田よりはやはり少し強いのじゃあないかと心配です。 周りを高い森で囲ってしまうなど、いろいろ手当を考えたいと思っています。
ボートコースの最終チェックと招致委員会との打ち合わせのために、 FISAのマット・スミスさん(副会長 アメリカ人男性)とスヴェトラさん(施設委員長 ブルガリア人女性)が来日されました。 10月12日(金)日本ボート協会の関係者との懇親会を開きましたが、特にスヴェトラさんはこのために何度も来日し、 自らコースの図面を引いたりもしてくれて、われわれとしては大感謝です。 お二人は2005年の長良川での世界選手権での日本の対応が「まことにすばらしかった!」と口を揃そろえて言っており、 「日本でのオリンピックは成功間違いなし!」とのご託宣。うれしい限りです。
日本に国際レースのできる満足なコースが(長良川のほかには)一つもなくて、恥ずかしい思いをしていますが、 この機会になにがなんでも悲願を達成すべく、関係者一同ベストをつくすつもりですので、是非ご協力をお願いします。