インフォメーションINFORMATION
強化戦略プラン
強化委員会
はじめに
強化委員会では、これまでの「強化方針」を一新し、新たに今後の我が国におけるボート競技の振興の基本的な方向性を示すとともに2020年東京オリンピックに向け国際競技力の向上とメダル獲得の実現に向け、その基本的な戦略プランを以下のとおりまとめた。
Vision
競技力、普及、ガバナンスの全ての面で世界の強豪国となり、世界レベルでの大会におけるFinal A進出クルーを排出し、究極の目標であるオリンピックでのメダル獲得を実現する。
Mission
- タレント発掘事業を推進し、エリート選手のための世界に通用する世代を超えた継続強化プログラムを実行する。
- 日本のボート競技推進のためにリーダーシップを発揮し、普及活動の一層の浸透と地域の団体のための強化プログラムを実行する。
- 選考に関し透明性を維持し、公平・公正性を向上させることにより、ボート競技全体のレベルアップを図る。
Objectives
最大酸素摂取量の向上
日本選手のフィットネス・フィジカルは強豪諸外国の代表選手のそれらに対し圧倒的に劣る。その代表的な指標は最大酸素摂取量であり、それはRowingのパフォーマンスに直結する。日本選手が世界と戦うためには、その最大酸素摂取量の向上が必要である。2016年・2020年日本代表チームにおける目標とする最大酸素摂取量は表1・表2の通り定める。このような数値を出す優秀な選手に対し、日本を代表するコーチが技術指導を行うことでオリンピックでのメダル獲得を実現する。つまり、フィットネス・フィジカルの高さはメダル獲得に向けての必要条件である。
表1 2016年日本代表チームにおける最大酸素摂取量目標値
カテゴリー | 女子 | 男子 |
---|---|---|
Open | 4.6 L/min | 6.3 L/min |
軽量級 | 3.8 L/min | 5.7 L/min |
表2 2020年日本代表チームにおける目標最大酸素摂取量目標値
カテゴリー | 女子 | 男子 |
---|---|---|
Open | 4.7 L/min | 6.8 L/min |
軽量級 | 4.1 L/min | 6.2 L/min |
表3. 2016年日本代表チームにおける2000mエルゴメータタイム参照値
カテゴリー | 女子 | 男子 |
---|---|---|
Open | 6:51 | 6:01 |
軽量級 | 7:13 | 6:18 |
表4. 2020年日本代表チームにおける2000mエルゴメータタイム参照値
カテゴリー | 女子 | 男子 |
---|---|---|
Open | 6:47 | 5:46 |
軽量級 | 7:05 | 6:04 |
Strategies
世界で競い合うトップアスリートの育成・強化
- 複数種目での決勝進出及びメダル獲得を目指す。その実現に向け、将来を見据えた中・長期的な強化・育成戦略を推進する観点から、各ジュニア選手権大会のメダル獲得数の大幅増を目指す。
- 世界の強豪国に伍する競技力向上を図るため、ジュニア期からトップレベルに至る継続的・体系的な強化体制を構築する。
- 各地域・団体との連携を強化し、トップアスリートがジュニア期から引退後まで安心して競技に専念することができる環境を整備する。
[具体的取り組み]
A.継続強化の促進と定着
これまで、ボート競技における強化は、各年度で選考に勝ち残り世界選手権やオリンピック出場権を獲得した選手のみを対象としてきた。そのため、強化はスポット的になり、長期にわたりナショナルチームに所属し続ける選手は数えるほどであった。また、その強化方法が一般に知られておらず、日本のボート界の誇りとなるべきナショナルチームはいわば孤立していた。
強化委員会として「継続強化制度」を制定し、各カテゴリーで、一旦、日本代表として選考された選手は基本的に複数年にわたりナショナルチーム所属選手としてカテゴリーを超え強化を継続する。
図. 強化と発掘・育成概略図
B.一貫強化システムの構築および推進
スポーツ医・科学サポート等による多方面からの戦略的支援、ナショナルコーチ等の配置、才能あるジュニアアスリートの発掘(種目選択型タレント発掘)などをはじめとする競技者育成プログラムに基づく一貫指導体制の促進等により、ジュニア期からの中・長期的な強化・育成戦略の実施を推進する。
C. タレント発掘事業の推進
タレント発掘事業は世界各国で盛んに行われており日本チームにおいてもそれなくして成功はない。タレント発掘事業により見出されたタレント(才能)は、継続強化システムへと取り込み英才教育を施す。また、フィジカルレベルの高い他競技の選手に、水上技術を習得させることを目的とする種目転向型タレント発掘事業も推進する。
D.専門家集団によるナショナルチームの支援
ナショナルチームにおいては、「チームニッポン」として、コーチの他、マネージメントスタッフ、フィジカルトレーナー、フィジカルテラピスト、フィジカルコーチ、栄養スタッフ、臨床心理士などが関わり、各選手にとって最適なトレーニング環境を確立する。また、国立スポーツ科学センターやナショナルトレーニングセンター(赤羽、戸田)との連携も強化し、様々な方面からの分析、支援を要請する。
E.所属団体を活用した分散型強化拠点ネットワークの構築
高度な練習環境を通じてトップアスリートの競技力向上に貢献しているチームを「分散型強化拠点」と位置づけ、全国各地に強化拠点を設定し、ボート競技ナショナルトレーニングセンター(NTC戸田)等とのネットワーク化を図ることなどにより、国全体として戦略的にトップアスリートのための強化活動を行う体制を構築する。
ボート界における透明性や公平・公正性の向上
- ガバナンス強化に継続して努め、管理運営の透明性を高めるとともに、スポーツ紛争の迅速・円滑な解決を支援し、公平・公正なボート界を実現する。
- ドーピングのないクリーンで公正なボート界を実現する。
[具体的取り組み]
A.公平・公正なスポーツ団体の運営の確保
日本ボート協会では、他の競技団体に先駆け、裁定委員会制度、内部通報制度、コンプライアンス既定を整備してきた。今後もアスリートや指導者等が公平・公正な環境のもとでスポーツ活動を行うことができるよう、団体の運営にアスリートの意見を反映する仕組みの導入や女性の団体役員等への積極的な登用を推進する。
B.ドーピングのないボート界の維持
これまで日本のボート界において、ドーピングに関する事例は報告されていない。今後も医科学委員会の主導のもとに、ドーピングのない強化活動を維持していく。
Specific Strategies
世界で競い合うトップアスリートの育成・強化
シニアにおいては、表5で示すように年間10000kmのトレーニング量を、相当量の筋力トレーニングと並行して行うことにより大幅なフィットネスの向上を図る。そのためには、各所属団体におけるトレーニングで週150km以上(平均週180km)、強化合宿中では週200km(平均週230km)のトレーニング量を最低限のラインとして設定し、選考目的の合宿を除く強化合宿は年間20週程度の確保は必要である。その強化が複数年継続して初めてフィットネスが改善する。
他のカテゴリーにおいても、それに準ずるトレーニングが必要である。
表5 年間10000km/1000時間のトレーニング量の確保
カテゴリー | U19 | U20 | U21 | U22 | U23 | シニア |
---|---|---|---|---|---|---|
時間(h) | 600 | 750 | 800 | 850 | 900 | 1100 |
距離(km) | 5000 | 7000 | 7500 | 8000 | 8500 | 10000 |
心理支援・栄養
これまで心理支援や栄養についてはあまり重視されてこなかった。
心理支援に関しては、医科学委員会、JISS等への支援を要請し、臨床心理士などを合宿へ帯同してもらうことにより、チーム内の問題の解消に努める。また、栄養支援に関しては、フィットネスの向上を考える上で非常に重要であり、日本チームが主戦場と考える軽量級というカテゴリーにおいては、栄養指導により効率的な栄養摂取による体重管理と筋量の増大が見込まれる。
強化体制の役割分担とコーチの評価方法
これまで日本ボート協会では、強化方針から選手間の問題まで全てを代表コーチに任せてきた傾向がある。強化体制の役割分担を明確にし、強化ビジョンは強化委員長を中心とした強化委員会が策定し、各専門家がマネージメント、心理・栄養支援、身体のケア、トレーニング計画立案などを遂行する。他方、コーチは各専門家により作り上げられた土台を元に厳正なる選手選考と技術指導を実践し、その結果について評価をする仕組みを構築する。