インフォメーションINFORMATION
アンチ・ドーピングに関する注意喚起 その2
日本ボート協会医科学委員会
アンチ・ドーピング担当 牧田茂
ドーピングに関する知識の不十分な事例が目立ちますので、選手・コーチ・監督に再度注意喚起をします。 ドーピング禁止薬を治療のために使用した場合、必ず事前にTUE(Therapeutic Use Exemption:治療目的使用に係る除外措置)申請が必要になります。 これを怠り、尿検査で陽性となった場合、日本ボート協会のアンチ・ドーピング規定に従い制裁が課せられます。 「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない事態となります。 ドーピング違反者には社会的制裁も受ける可能性が十分にあることを念頭に入れて、 アンチ・ドーピングに関する十分な知識を持つように普段から心がけておいてください。
気管支喘息で吸入薬等を使用している選手、糖尿病でインスリン注射をしている選手その他病気のためドーピング禁止薬を 使用せざるを得ない選手はTUE申請が必要です。TUEには標準TUEと略式TUEの2種類があります。 いずれの書式も日本アンチ・ドーピング機構(JADA)から取り寄せ、主治医または担当医に記載してもらい、 標準TUEなら原則大会21日前までにJADAに提出して審査してもらいます。略式TUEなら大会直前までにJADAに提出し、 書式内容に問題がなければ受理された時点で有効となります。認められたTUEは有効期限がありますので、 期限が切れる前に再度申請しないといけません。なお全ての標準TUE申請に対して『標準TUE申請確認書』の提出が必要になりました。
1) β2作用薬
気管支喘息の予防および治療を目的に、日本では2種類の吸入薬のみが使用できます。サルブタモール、サルメテロールです。 使用に当たっては略式TUE申請が必要です。β2作用薬でこれ以外の薬を使用することはできません。 その他の喘息吸入薬についてもドーピング禁止薬物でないか調べておかねばなりません。
2) ステロイド(糖質コルチコイド)
経口、経直腸、静脈内ならびに筋肉内使用は禁止されています。 したがって治療上どうしても必要な場合は標準TUE申請をしないといけません。 関節内、関節周囲、腱周囲、硬膜外、皮内使用および吸入は略式TUE申請が必要です。 気管支喘息でステロイドの吸入薬を使用した場合がこれに当たります。皮膚、目、耳、鼻、口腔内、歯肉、 肛門周囲の局所使用の場合はTUE申請が不要です。花粉症やアレルギーで局所使用した場合がこれに当たります。
3) 静脈内注入(いわゆる静脈注射や点滴)
緊急の医療状況において静脈内注入が必要であると判断される場合は、遡及的TUE(さかのぼってTUEを申請するという意味) が必要となります。標準TUE書式によって申請し、提出されたTUE申請書によって医療行為の正当性が審査されます。 治療以外で安易に静脈注射を医師に要求してはいけません。
4) 一般的注意
- 総合感冒薬には禁止薬物の含まれていることが多い。
- 競技会3日前にはかぜ薬の服用をやめる。
- 鼻炎の薬も要注意である。
- カフェインは禁止薬物から除外されてモニタリング物質に変更された。
- 飲む発毛剤(プロペシア)には禁止薬物が含まれている。
- 育毛、養毛剤にはテストステロンを含むものもある。
- 漢方薬は成分のはっきりしないものもあり特に注意する。
- 信頼できないサプリメントは絶対に口にしない。
- 医療機関を受診するときは、ドーピング禁止薬物を処方しないように医師に伝える必要がある。
- 治療薬の成分をはっきりさせ、メモをつけておく。
- 成分のはっきりしない薬は絶対に飲まない。
- 薬についてわからないことがあれば、主治医に相談するもしくは、チームドクターや禁止薬物に知識のある医師や薬剤師に相談する。
5) その他
- TUE書式はJADAのHPからダウンロードできます。
http://www.anti-doping.or.jp/doc/3_tue.html - TUEの提出先(国内)はJADAのTUE委員会です。
急ぐ場合はファックスで送った後原本を郵送します。 - 禁止薬物、特に気をつけたい市販薬、使用可能薬リストは日本体育協会HPのドーピング防止を参照してください。
http://www.japan-sports.or.jp/doping/index.html - JADAでもアンチ・ドーピングに関する相談にのってくれます。
財団法人日本アンチ・ドーピング機構 事務局
- TEL:
- 03-5963-8030
- FAX:
- 03-5963-8031