公益社団法人日本ボート協会

Japan Rowing Association

インフォメーションINFORMATION

長良川そして北京へ向けて - 2005年度強化方針

平成17年4月20日
社団法人 日本ボート協会
理事長 平岡 英介
強化委員長 細田 眞

皆様の御承知の通り、ナショナルチームは2000年シドニーオリンピックでの日本ボート史上初のオリンピック決勝進出(LM2X 6位入賞)を果たし、 これを受け、強化委員会としては2004年アテネオリンピックでのメダル獲得を目指し、強化方針をたて、これを実行してきた。 特に日本ボート界が総力を挙げ、メダルが期待されたLM2Xでは、2大会連続の6位入賞を果たすことは出来たが、 残念ながら目標としたメダル獲得には至らなかった。 シドニーでは出場出来たLM4-は選手のレベル向上は見られたが、残念ながらアテネ出場資格を逃した。 LW2Xは、協力団体の多大なる支援を受け、8位入賞の目標には届かなかったものの、シドニーに比べ、順位を1つあげることが出来た。

アテネオリンピックの結果を検証してみると、オリンピック前年の世界選手権で出場資格を得ておくことにより、 本戦にむけたコンディショニングが出来、上位入賞への可能性が更に高くなる事が予見された。また、 女子種目でルーマニアが金メダル3個を獲得した以外、男女共に全ての金メダルが異なる国が獲得した。 ボート大国といわれる米豪英独ですら金メダルは1種目(独は男女1個ずつ)で、 オリンピック全種目にエントリーできたのは独1国であった。 要すれば、日本よりも選手層の厚い諸外国も、重点種目に絞り金メダルを狙うようになって来た事が如実に現れた。 この為、早期に重点種目を絞り、オリンピックイヤーは本戦に向けて、クルーの熟成に専念するために、 前年の世界選手権でオリンピック出場資格を上位で獲得することの重要性を再認識したものである。

シドニーからアテネへの4年間で秋季から冬季に掛けての1Xによる次年度ナショナルチーム選考は個々の 選手の競技力向上に寄与しメダルを逃しはしたがTOPに位置付けたLM2Xが2大会連続の入賞を果たす原動力となった。 しかし、シドニーではオリンピック出場を果たしたLM4-は出場権を逃し、 毎年クルーが変わることによる錬度不足とTOPの次の層の強化が不十分であったことが確認された。
シドニーからアテネへ向けての経験と反省から、強化委員会は2008年北京オリンピックで悲願のメダル獲得と、 北京以降日本が安定した力を発揮出切る事を目的に次世代強化の2点を目標とし毎年の強化方針を策定する事とする。

1) 2008年へ向けての強化方針

TOPクルーの強化

2008年北京オリンピックに向けLM2Xを日本チームのトップクルーと位置づけメダル獲得を至上命題とし そのためにすべてのベクトルを合わせる。
また、そのためには2007年の世界選手権でオリンピック出場資格を上位で得る事が重要なポイントとなるが、 2005年・2006年はその準備の期間とする。 それぞれの年のワールドカップ・世界選手権ではオリンピック種目以外の種目にも積極的にチャレンジし、 結果としてオリンピック種目のポテンシャル向上の糧とする。

2005年度
選手発掘・補充・ボート競技の普及
2006年度
重点種目強化
2007年度
重点種目強化・オリンピック出場権獲得
2008年度
重点種目強化・北京オリンピックメダル獲得

次世代層の強化

北京の次またその次と日本は安定した力を出していかなくてはならない。そのためには競技人口の増大を図り一貫した、 継続した強化を行う必要がある。 強化委員会はTOPクルーの強化によりボートを世間に認知して貰う事で競技人口増加に寄与するものと自覚している。 このために次世代そして永続した強化が重要な課題となる。この点ついて4項で詳述する。

2) 強化体制(強化委員会と強化スタッフ)

役割分担の明確化の為、委員会とスタッフの役割を以下の通り定義する。

委員会は方針立案・会計・合宿遠征手配・スタッフのサポート・事務局との連携等を行い強化担当理事と選任されたメンバーにより構成される (高体連強化・医科学・マネージメント統括・現場スタッフ統括・その他を担当する)

スタッフは選手を直接指導するコーチと運動生理強化担当・トレーナー及び 学連派遣の学生マネージャーで構成し人数・顔ぶれは必要により随時変更する。

委員会は必要により拡大委員会とし国際・医科学・その他をオブザーバーとする。

3) コーチの増員と海外コーチ/コーチの評価システム

シドニー以降大林コーチを中心にアテネに臨む事を確認し、2大会連続の決勝進出を実現したものの、負担が集中した。 全体のレベルアップと言う観点で言えば、コーチ陣営の強化と言う意味で改善の余地がある。 クルー数が多く目が行き届かない、コーチと選手のコミュニケーション不足、単眼的見方に陥りやすい、等が懸念される点であり、 改善を目指すものである。

コーチ不足を補い、コーチ同士の切磋琢磨の為に、また日本人コーチのコーチ技量向上の為に海外コーチの導入を行う。 JOC補助金コーチ枠(ジュニアコーチ枠)の増員を確保、イタリア人コーチPostiglione Gianni氏と北京までの契約を結んだ。 同氏には北京に向け日本のTOPチーム(A1と呼称・後述)を指導させ北京オリンピックでのメダル獲得を目指す。 一方で2005年世界選手権には、自国開催の為に従来より多くのクルーが派遣されるが、 コーチの絶対数が不足するので選手派遣団体のコーチを中心にその補助を依頼している。

コーチのモチベーションを高めるために、またJOC及び協会の金が有効に使われているかを判断するために、 コーチの評価システムを導入する。 強化委員会で一次評価を行うが理事長を中心に数名の評価委員会を設置しシーズン毎にコーチの成績評価を行い次年度の契約継続の判断とする。 メンバー選定については今後の協議とする。

コーチの評価方法については今後の協議とするが、レースの結果に囚われる事無く年度の目標とその到達度を測り評価の尺度としたい。

4) シニアA2カテゴリーの新設とシニアB(U23)の強化

アテネまでの強化はトップチームの強化(オリンピックでメダルを取るために)を中心で行われてきた。 その他にはU19・U23の強化をそれなりに行ってきたがU23とトップチームとの間の層の強化が抜けてきた。 トップチームを強化するためにU23からその上の層の強化が必要であることは認識されていたが、 コーチ数の不足ゆえに後廻しにされてきた事は否めない。

北京に向け外国人コーチと契約できた事でコーチ数に余裕が出来るのでこの層をシニアA2と名づけ、 オリンピック種目の強化(07年世界選手権での北京オリンピック出場権確保と入賞)とオリンピック種目の次代を担う選手の強化を目的とする。 残念ながら強化予算乏しい中でトップチーム(シニアA1と呼称)ほどの強化費を割り振ることが出来ないので、 個人負担を増やす事を理解してもらい、 日本代表チームとしての人数を増やしワールドカップや世界選手権への出場機会を増やす事で海外選手とのレースを経験させる事とする。

アテネまで毎年シーズンオフに翌シーズンの選考レースを行っていた。これにより選手個々の漕力向上に繋がり、 またシーズンオフの選手の目標ともなり日本ボート界の競技力向上に寄与したと自負しているが反面、 毎年チームを組みかえることになり継続した強化の点で問題も指摘されていた。 シニアA2を創設することで選手強化の枠を増やしこのような問題点も解決してゆきたい。 次代を担うという目的の為にこの層はシニアB(U23)の強化と密接な関連を持つもので一体となった強化を進める。

シニアB(U23)カテゴリーは大学生を主に対象とした海外チャレンジの機会として今後も継続させる。 ただし、2005年は長良川世界選手権の特殊事情の中で、後述する世界選手権派遣選手団の中から該当するクルーがあった場合派遣する事とし、 そのための選考会は行わない。

シニアA1 実質北京オリンピックへ向けたトップチーム (07年世界選手権上位での北京オリンピック出場権確保)
外国人コーチの下長期海外キャンプ等により競技力向上を目指す
2005年度4月11日~7月12日(欧州)
シニアA2 オリンピック種目強化(07年世界選手権での北京オリンピック出場権確保)
次代のシニアA1候補選手発掘・強化
一部個人負担増による国内強化合宿及び海外派遣
シニアB(U23) 大学生を主対象とした層の強化
ワールドU23 ローイングレガッタ参戦
この層の強化はシニアA2層の強化に直結する認識を持つ
U19 高校生を主対象とした層の強化
アジア/世界ジュニア選手権参戦
高体連強化部と連携による強化
5) 2005年度強化方針

ご承知の通り2005年にはアジア地域で初の世界選手権が岐阜県長良川国際レガッタコースで開催される。

地元・協会・そして日本のボート関係者挙げてこの大会成功の為に尽力しているが、 強化委員会はこの大会を北京への第一歩と普及への足がかりとして臨む事とする。

日本ボート界の急務の問題として競技人口の減少が上げられ久しい。特に底辺である高校生の減少は著しく、 ここ数年のインターハイではフルエントリーできない県が後を絶たない。 今般の世界選手権日本開催は競技人口拡大の千載一遇のチャンスであり、 マスコミを通じ広くボート競技を知らしめてもらう事を期待したい。

前述のように2005年と言へど2007年(オリンピック予選の年,ミュンヘン世界選手権でのオリンピック出場枠確保)へ向けての過程の年である。 幸い2005年には例年より多くの選手を日本代表チームとして抱える事が出来るがこの中から北京へ向けての選手が輩出されるものと期待する。 派遣選手は2004年秋からの選考レース・強化選考合宿を経てクルーを組み、 さらにクルーはシニアA1・2・3(3は2005年のみのカテゴリー)の3グループに分けそれぞれ強化を行う。

1. 2005年度世界選手権参加種目

軽量級 男子 1X A1
2X ※ A1
2- A2
4X A3
4- ※ A2
8+ A2 以上21名 + COX 1名
女子 1X A3
2X ※ A3
4X A2 以上7名
オープン 男子 2X A2
4X A3
4- A3
4+ A3 以上14名+COX 1名
女子 2X A3
4X A3 以上6名
合計 男子 35名 + COX 2名
女子 13名
  • ※マークはオリンピック軽量級種目・2007年度重点強化種目

2005・2006年度は経過の年度の為オリンピック種目=重点強化種目とは必ずしもならない
クルーは強化委員会で行う「強化選考合宿」を通じて決定され、すべてのクルーは強化委員会のコントロール下に置かれる
A1~3は2005年度カテゴリー

COXは2005年度全日本選手権M8+・M4+上位入賞クルーで派遣選手団に漕手を派遣しているクルーのCOXより選考する (優先順位:8+1,2,3 4+1,2,3)

2. 2005年度強化スケジュール

シニア
1月17~21日 強化選考合宿 戸田 実施済み
2月14~18日 強化選考合宿 戸田 実施済み
3月7~18日 強化選考合宿 戸田 実施済み
シニアA1 4月11日~7月12日 欧州強化合宿(ギリシア・イタリア他)
ワールドカップ1,3戦参戦 他
シニアA2 4月4~15日 強化選考合宿 実施済み
6月 強化合宿 期間未定 場所未定
7月8~10日 ワールドカップ#3ルッツエルン派遣 期間未定
個人負担20万程度を見込む
国内強化合宿・海外派遣含めアシスタントコーチを募集する
7月 強化合宿 期間未定 場所未定
シニアA3 母体となる水域・団体を決めそこへ選手が集合しクルー毎にトレーニングする。
母体となる水域・団体のコーチに強化委員会より指導を委嘱する。
強化練習を行う場合強化委員会からコーチを派遣することもある。
8月 シニアA1・2・3 強化合宿
期間は未定 場所:田瀬湖他予定
8月22~9月4日 世界選手権参戦 長良川
その他の海外派遣予定レース
アジア選手権 10月20~23日 ハイデラバード インド 派遣期間未定
東アジア大会 11月3~5日 マカオ 派遣期間未定
'05年度世界選手権派遣選手より選考予定
U23
2005年度ワールドU23ローイングレガッタへの派遣は世界選手権派遣選手で組むクルーで該当するクルー(A2カテゴリー)があった場合検討する
派遣のための選考レースは行わない
2006年春期に関東・関西地区にて合同キャンプ実施予定 詳細追って発表
U19
6月10~12日 全日本ジュニア選手権 熊本県菊池市
6月12~16日 強化合宿 期間予定 場所: 菊池
7月12~15日 アジアジュニア選手権 場所:韓国 華河(Hwacheon)
JM1X JM2X JW1X JW2X 派遣予定
7月中旬 強化合宿 期間未定 場所未定
8月3~6日 世界ジュニア選手権 場所:ブランデンバーグ 派遣期間:未定
JM1X JM4X JW1X JW4X 派遣予定

3. 選手の費用負担について

強化選考合宿・強化合宿・海外派遣には選手に協会規定及び強化委員会で制定した応分の費用負担を求める。

各カテゴリーの費用負担については別途通知いたします。