COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大防止のために各選手、さまざまな状況下で日々の生活をすごしているところと思います。まだ今シーズンの練習の本格的な再開や大会参加の目途がたたない状況下です。こんな時期ですが、こんな時期だからこそ、選手の皆さんとともに乗り越えていきたいと思っています。
日本代表チームを率いるギザビエ・ドルフマンNSD(ナショナル・スポーツ・ディレクター)、吉田理子コーチ、パラローイングの大戸淳之介ヘッドコーチに今できること、皆さんへ伝えたいことなどを聞きました。
今まで積み重ねてきたトレーニングが失われることはありません! ローイングにおけるパフォーマンスとは長期的な目標であり、フィジカルおよび技術的なスキルを継続することが重要なのです。
現在の状況は例外的ともいえますが、漕手はそれぞれの状況に適応する必要があります。
有名な言葉に、「柔軟性と適応性は、最も困難な状況に対処するための不可欠なツール」です。
"Flexibility and adaptability are essential tools for dealing with the most difficult situations."
代表選手の心境を案じて個人的に連絡を取ったものの、ほとんどの選手がすでに気持ちを切り替えて、次の目標に向かってトレーニングをしています。選手たちがこれまで培ってきたものはボートの技術や体力だけではなく、修正力、計画力、判断力も大いに成長しており、前向きに日々を過ごしていることを頼もしく思います。このような感想を選手一人ひとりに伝えつつ、こまめに状況確認をし、報告を求めながら、気持ちが切れていかないように励ましていきたいと思います。また、グーグルシートのエルゴスコアやトレーニング内容を確認しつつ、トレーニングの方向性や体調などの管理を話し合うことも重要だと思います。
この未曽有の状況は自分だけに襲いかかった罰ではなく、このようなときにこそ柔軟に対応していくことが大事だと発信しつつ、常に選手の支えになるという私の思いを必ず伝えたいと思います。
パラリンピックをはじめ目標としてきた大会が延期、中止となったことは大変残念で心苦しいことですが、今まで皆さんが大会に向け、たくさんの挑戦をしてきたことが無駄になることはないと思います。
その時、その時に何をしてきたのか振り返り、ご自身の自信となる「強み」を発見してみてください。
できなかったことができるようになったと理解することで、次にどんなことをするのが自分にとって良いことなのかを知ることにもつながると思います。
ボート競技以外にも通用することが身についているはずですから、今までの練習や挑戦が無駄になったと思うことなく、ご自身の取り組んでこられたことをプラスに考えてください。
1年延期された東京オリンピックにおいて成功を収めるために、新しい戦略が必要です。 14か月で準備を整えるには、トレーニングと競技大会の適切な計画が、最良のコンディションに到達するためには欠かせません。
次のシーズンは、冬のトレーニング期間となりますが、クルーの選択期間です。そして、ついにオリンピック前の最後の「仕上げ」期間となります。
したがって、優先されるのは、この新しいシーズンに備えることです。
4月は、意識をしっかり保ち、プレッシャーとストレスを取り除き、回復させ、今後待ち受ける新たな課題に備えるための重要な時期です。
5月から、基本的なトレーニングに戻る必要があります。つまり、体力増強です。活動自粛が緩和され、安全な練習環境が整備されれば、水上に戻ってボートで何キロも漕ぐ必要があります。
そして、向上を続けるためにも、できるだけ早く、競技大会(水上レース)を設定します。
トレーニングは、できることをやる、ということだと思っています。
社会が自粛生活の中にありながら、トップアスリートだけにトレーニング活動が認められるようなことは、選手は信頼を失いスポーツの価値を下げることになります。すべての人間の優先事項は、命を守る行動です。選手はそのことを十分に理解し、自分が今いる環境の中で、できることをやることだと思います。
しかし、緊急事態宣言が解除になった場合、延期になった場合の合宿について、いくつかのパターンを計画し、示さねばならないと思っています。特に、現在、水上でのトレーニングができていない代表選手たちには、その機会を早く知らせてあげたいと思っています。
今、優先するべきは一人一人が感染拡大防止対策を考え、行動することだと思います。アスリートである前に社会の一員として正しい行動をするべきであると思います。
次の目標が定まるまでは少しの休息の期間として過ごすことも良いでしょう。
宅内でできるトレーニングをするのも良いでしょう。水上トレーニング以外にもトレーニングすべきことはたくさんあります。
無理に「練習をしなければならない」と考えるのではなく、「ボートに乗りたいな」という気持ちになった際に思いきり身体を動かして、
次にボートに乗れた時に思いきり楽しめるよう想像を膨らませながらトレーニングしてください。
皆さんが楽しめる形で体を動かし、ご自身が健康でいることも社会貢献につながります。
適応できる漕手は、成功のための新しい戦略を即考え、それに合わせて、モチベーションも即上げることができます。
私たちは多くのトレーニングツール(エルゴメーターとWattbike)を持っています。インターネットでコミュニケーションをとり、さまざまなアプリケーションを介してバーチャル集合トレーニングに参加するなど、単調な毎日を解消するのはそれほど、難しくないはずです。
漕手全員は普段これらのマシンで出しているスコアを知っているのですから、今こそ、スコア改善に取り掛かる良い機会です!
代表選手については、ギザビエさんが作成してくれたグーグルシートや普段のLINEなどを使ったコミュニケーションのなかで、選手に対しての「気づき」を示すことが重要だと思っています。選手が工夫をしながら日々のトレーニングをしていることに対して、すばらしいなと思っています。そういう時には「見ているよ」というメッセージを伝えるようにすることは必要だと思っています。
国際大会にとどまらず、国内の大会も次々と延期や中止などの措置が取られているため、何をモチベーションとしてボート競技と接するのかはとても難しい状態だと考えます。特にアスリートとしてボート競技に取り組んでいる方々にとっては、大会に出るという楽しみが見えないことでトレーニングの意味を見つけにくいかもしれません。ただ私はこの状況がいつまでも続くとは思いません。いつか必ず大会が行われることになると思います。
この状況を充電期間とすれば、「次の大会でどんな結果を出したいのかを想像する」ことで、ご自身がやりたいことや、やるべきことが見えてくることもあると思います。今はできないことも多いですが、日常が戻ったらすぐにシフトチェンジできるように備えることで、次の大会で望む結果を引き寄せることができるようになると思います。
宅内環境下でのトレーニングのヒント
もしトレーニングできる環境があり、モチベーションも高いのであれば、今はとにかくケガをしない身体づくりを進めてほしいと考えます。
宅内でもできる、
・体幹トレーニング、バランストレーニング
・柔軟性向上のためのストレッチ
・自重を使った筋力トレーニング
などに積極的にチャレンジしていただきたいです。
もしエルゴメーターがあり、ローイング動作をできる環境があるなら同じ動作(グリップの高さ、使っている身体の部位、レンジの長さ)をより強い強度で続けられるように取り組んでいただきたいです。強い強度のトレーニングに耐えられる身体があれば、水上トレーニングでも競技力向上の可能性が上がります。
さらに、ボート競技の動画を見ることができるのであれば、過去の大会動画などをチェックしてもいいかもしれません。
私は常に、新しい状況に適応し、困難に対応できるよう努力してきました。このような困難な状況は、自分一人だけではなく、すべての人にとって問題なのですが、問題が多ければ多いほど、正しい方向に行動することで、他人との違いが生まれると思います。
だからこそ、私たちにとって有利であることを確信しています。
日本代表候補選手たちは3月までのエルゴ記録で3つのカテゴリー(女子軽量級、男子オープン、女子オープン)で日本記録を破りました。また3月20日からのスモールボートセレクションでも高いパフォーマンスを見せてくれました。私たちは最高のスポーツシーズンを実現するために努力してきました。日本代表チームは順調に軌道に乗って、強化されており、今年の追加トレーニングは、来年さらに強くなる機会になると信じています。
2020年4月のアジア大陸最終予選の中止は大変残念ではありましたが、オリンピックの延期は、シーズン最初の目標である韓国での予選での4勝を達成するための非常に良い機会だと考えています。
したがって、私のモチベーションは損なわれておらず、むしろ、さらに増しています。チームの皆さんに再会できる日が待ちきれません!!!
現在私は、毎日コースに行くこと、自宅でトレーニングをすること、勉強をすることで一日を過ごしています。新型コロナウイルスによる学校教育活動の休止は、学習習慣がまだ確立できていないままに自宅待機になってしまった小学校低学年の児童への影響は特に大きく、学校再開後の生活に支障をきたすのではと考えていました。
もともとソーシャルスポーツに関心があり、不登校や集団生活が不得意な児童生徒たちに、スポーツの力で気づきを与えられるような活動がしたいと思うようなりました。
そこで今は、通信教育を利用して、学校カウンセラー及びカウンセリングの講座を受けています。
また、コロナ禍が収束したのちに、すべての全国大会への機会を失ってしまった中高生のボート選手たちと関わる機会を作りたいと考えていて、
2018年のユースオリンピックで経験したFISAのプログラムにある、リレー形式のレースができないかと、漠然と考えたりしています。
年齢、性別、所属、艇種やカテゴリーの枠をとって、ボートを愛するすべてのアスリートが1つのチームになり、
リレー形式のレースをすることで交流をはかり、お互いの価値やボート競技を高めていく機会です。
http://www.worldrowing.com/mm//Document/General/General/13/57/44/YST_WorldRowing_Carddesign_DIGITAL_final_Neutral.pdf
ナショナルコーチとして、教師として、またオリンピアンとして、スポーツを通して社会に貢献したいという気持ちは1ミリも減らずに過ごしています。
私自身は、次に行われる大会がどうなるのかを注視していくことが求められています。
そして大会が設定された時に向けて、どんな状況でも対応できるように想定しながら計画を練り直しています。
やるべきことが明確なので特に落ち込んでいることもありません。
以上